episode102 ページ8
｢あのーすみません…ゾムっていらっしゃいますか？｣
｢ゾムさんですか？ごめんなさい、彼なら今しがたフラフラっと何処かへ行ってしまいました｣
｢……そう、ですか｣
貴重書物や戦時資料、一般書物などが保管管理されている城内部に作られた資料館。厳重に警備された資料館に備え付けられた観葉植物生い茂る一室で書類片手に紅茶を啜っていたエーミールさんは、落胆する私に申し訳なさそうに頭を下げた。
神出鬼没の緑の脅威にちょっとした用があり、彼が暇な時に入り浸っているというここへ足を運んでみたのだが、どうやら丁度入れ違いになってしまったようだ。
さて、どうしたものか…
と、顎に手を当ててゾムが行きそうな場所を考えていると、エーミールさんに名前を呼ばれた。
｢Aさん、どうです？少しここで息抜きしていきませんか？｣
｢へ？｣
｢あ！嫌なら全然大丈夫です！すみません変なこと言って…｣
突然の目の前の彼の申し出に思わず戸惑いの声をあげると何か勘違いをさせてしまったらしく、エーミールさんは｢へへ、｣と笑って、誤魔化すように頬を掻きながら眉を下げた。
心が…心が痛い。
動かない私に首を傾げながら忙しく指をモジモジと絡ませるエーミールさん。私は身近にあった椅子を彼の正面に来るように移動させて腰を下ろした。
｢ちょっとだけお邪魔しますね｣
ぎし、と背もたれに体を預けリラックス出来る体勢をして、私は目の前でポカーンとこちらを見つめる彼に笑ってそう言った。
｢ハッ、ちょ、ちょっと待っとってくださいね！今紅茶と茶菓子を用意します！すぐ用意しますんで！！｣
｢え、お気づかいなく！私の事は気にしないでください、｣
｢いやいや、私が用意したいだけなのでAさんこそ気にしないでください！｣
ふんす、と鼻息を荒くしてにこやかにそう告げたエーミールさんは有無を言わせぬスピードで新しい紅茶を作り、可愛らしいデザインのカップを私の目の前にコトリと置いた。
見とれる程の素晴らしい慣れた手つきで作り上げられたそれに思わず｢おぉ｣と小さく声が漏れる。
オスマンさんも凄かったが、エーミールさんの場合はその更に上を行く凄さだった。
｢お熱いので気をつけて飲んでください。あ！蜂蜜を入れる場合はこちらをどうぞ｣
｢あ、ありがとうございます｣
母国でも人気だった蜂蜜。私は彼に差し出されたハニーディッパーを手に取り、黄金に輝くそれをくるくると掬いとった。
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蛇狐(プロフ) - すみれいんさん» そう言っていただけて嬉しいです！まだまだ彼らの辿り着くべき未来への道のりは途方もなく長いものですが、最後まで見守っていただけたら幸いです(*^^*) (2021年3月9日 23時) (
レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 蛇狐さん» 126話では心がキュゥってなりました。そうだよね、そうやんねって身を捩りながら一緒に喜びました！ (2021年3月5日 19時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - すみれいんさん» ありがとうございます！無邪気に喜ぶtnを意識したのでそう言っていただき私もニッコリしました^^* (2021年3月5日 3時) (レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - tnが嬉しそうでこちらもにっこりしてしまいます。ありがとうございます！ (2021年3月2日 22時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - にら。さん» ありがとうございます！今のところTwitter垢はここで公開するつもりは無いのです…気が向いたらIDを出すかもしれませんが、もし夢垢があるのならば回覧板が回ってくるかもしれませんのでもしご縁がありましたらその時にでもよろしくお願いします。 (2020年12月29日 16時) (レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蛇狐
| 作成日時：2020年12月11日 16時
