episode128 ページ42
tn「右の耳たぶ。仕込み毒の為に抜かれた左の奥歯。腰付近の部隊証明用の焼印。この国に来たばっかの頃のぺ神の身体検診で教えて貰っとった」
「…仕方ない事だよ。あそこの軍は昔からそうだから……それにもう昔のことなんだからトントンは気にしなくて大丈夫だよ」
tn「あんなぁ、“受け入れる”と“受け止める”じゃ全然意味が違うんやで？」
「…同じだよ」
tn「いや、ちゃうよ。全然ちゃう」
そう言って耳たぶに触れていた彼の大きな手はすっぽりと私の両手を包み込み、ぎゅう、と強く握った。酔いが回ってるせいか、やけにポカポカとした彼の手の温もりによって少し冷えた指先がじんわりと熱を持った。
tn「過去の過ぎたことを受け入れるんは簡単や。けど、それで踏ん切りをつけることなんて出来ひんのや。ずーっと意識の外にまとわりついてくる。終わったことにせず過去を受け止めれば、その時点で決着をつけることが出来るんや」
「………」
受け止め、過去と、決着。
tn「俺はな、A。知らんのが怖い。自分の知らんところで仲間が傷つくのが嫌や。自分の無知のせいで相手を気づつけるのが嫌や。何も知らへんから、お前の心に近づけん自分が嫌いや……」
──やから、A。
tn「俺がお前を受止めたる。お前が背負っとるもん半分くらい俺に背負わせろ。お前の秘密…全部俺に教えてくれへんか？」
「……ッ」
ひゅっ、と自身の喉が震える音が聞こえた気がした。
私の、秘密。
はく、はく、と口を動かし何か言葉を出そうとするも緊張で声が出ない。
いいのだろうか。トントンに全てを話してしまっていいのだろうか。お父さんとの約束を破ってしまって、いいのだろうか──…
tn「……別に無理して言わんでもええで」
「…ぁ、ちが」
tn「大丈夫。ちゃんと分かっとるから、心配せんでええから」
困ったように笑って垂れ下がった頭をポンポンと撫でられ、思わず一粒の涙がこぼれ落ちた。
違うんだよ、トントン。トントンを信じてない訳じゃないんだ。信じてる…信頼してるからこそ、私を受け止めると、私の背負ってるものを半分一緒に背負うと、そう言ってくれたトントンだからこそ、思うように口を開けないんだ。
ぽつり、ぽつり。
無意識のうちに流れ出る涙が、私の両手を覆い包むトントンの手を濡らす。
そんな私に苦笑しながら、トントンはいつものように親指で目尻に溜まった涙を拭ってくれた。
【番外編】Happy Whiteday！→←episode127
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蛇狐(プロフ) - すみれいんさん» そう言っていただけて嬉しいです！まだまだ彼らの辿り着くべき未来への道のりは途方もなく長いものですが、最後まで見守っていただけたら幸いです(*^^*) (2021年3月9日 23時) (
レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 蛇狐さん» 126話では心がキュゥってなりました。そうだよね、そうやんねって身を捩りながら一緒に喜びました！ (2021年3月5日 19時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - すみれいんさん» ありがとうございます！無邪気に喜ぶtnを意識したのでそう言っていただき私もニッコリしました^^* (2021年3月5日 3時) (レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - tnが嬉しそうでこちらもにっこりしてしまいます。ありがとうございます！ (2021年3月2日 22時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - にら。さん» ありがとうございます！今のところTwitter垢はここで公開するつもりは無いのです…気が向いたらIDを出すかもしれませんが、もし夢垢があるのならば回覧板が回ってくるかもしれませんのでもしご縁がありましたらその時にでもよろしくお願いします。 (2020年12月29日 16時) (レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蛇狐
| 作成日時：2020年12月11日 16時
