episode123 ページ29
tn「……別に、不安とか…そんなんやいんや」
ut「ん？」
tn「不安やない。ちゃんと俺は楽しみって思っとるんや…でも、」
ut「でも？」
tn「……っ」
ポツリ、ポツリ、と話は始めたトントン。
ぎゅっ、と力が入った手に握られた煙草がぐしゃりと歪む。トントンは歪んだ煙草から登る白い煙を、ぼうっ、と眺めながら小さくため息を吐いた。
tn「グルッペンにな、言われたんよ。お前は今のAを見ていないって。確かに…確かにそうやって思った。現にAが人を殺したことがあるって知った時……俺はAになんも言えんかった」
ut「……なるほどなぁ」
tn「俺も両手で数え切れないほどの人間を殺してきた。初めて殺した時の事もちゃんと覚えとるし、今まで殺してきたヤツらの顔もちゃんと覚えとる。あの、人の命を奪う行為だけは……俺はAには知って欲しくなかった…」
──あぁ、トントンは優しいなぁ。
小さく絞り出された彼の小さな言葉を聞き、僕はそう思った。彼は…トントンは優しすぎるのだ。それに、Aちゃんも…泣きたくなるほど優しい。だからトントンは、辛いのだろう。
tn「アイツは人を救うのが小さい頃の夢やった。もし俺がもっと早くAを迎えに行けていたら、Aは人の命を奪う事を知らずにすんだかもしれへん。俺のエゴなのは分かっとる、…けど、Aにだけは…こんなん知って…こんなん背負って欲しくなかった……ッ」
ポトリ。
トントンが持つ煙草の灰が落ちて、じゅっ、と彼の手を燃やす。しかし、トントンはまるで痛みを感じないかのようにそれを無視して、また煙草を口に運んでいった。
僕は彼ら二人の間にどんな過去があって何があったのかなんて知らない。
でも、これだけは言える。
ut「Aちゃんもそうだけど、トントンも背負ってるもんやろ？……その辛さや、苦しさ、トントンも知っとるんやろ？……せやったら、一緒に背負ったったらええやん」
人を殺す事を“作業”として事務的に行っている僕からしてみれば、トントンのような生き方なんて辛くて出来ない。けど、それと同時に物凄く羨ましく感じた。
ut「何をそんなに後悔してるのか分からへんけど、でもちゃんと話し合えば大丈夫やで絶対。今更Aちゃんがトントンを拒絶するとでも思っとるん？」
tn「……」
ut「頑張るんやで、トントン」
僕が出来ることはここまで。あとは自分次第やで、トントン。
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蛇狐(プロフ) - すみれいんさん» そう言っていただけて嬉しいです！まだまだ彼らの辿り着くべき未来への道のりは途方もなく長いものですが、最後まで見守っていただけたら幸いです(*^^*) (2021年3月9日 23時) (
レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 蛇狐さん» 126話では心がキュゥってなりました。そうだよね、そうやんねって身を捩りながら一緒に喜びました！ (2021年3月5日 19時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - すみれいんさん» ありがとうございます！無邪気に喜ぶtnを意識したのでそう言っていただき私もニッコリしました^^* (2021年3月5日 3時) (レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - tnが嬉しそうでこちらもにっこりしてしまいます。ありがとうございます！ (2021年3月2日 22時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - にら。さん» ありがとうございます！今のところTwitter垢はここで公開するつもりは無いのです…気が向いたらIDを出すかもしれませんが、もし夢垢があるのならば回覧板が回ってくるかもしれませんのでもしご縁がありましたらその時にでもよろしくお願いします。 (2020年12月29日 16時) (レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蛇狐
| 作成日時：2020年12月11日 16時
