episode89 ページ42
──暗くて、狭くて、息苦しい。
隙間から差し込む光に怯えるように、耳を塞いで息を殺す。
知らないようで、知ってる光景が映っては暗闇に消えていく。
この空間の向こう側からは怒鳴り合う声や物が壊れる音が聞こえ、クローゼットの扉の隙間から見える影は三人。
母の声、父の声、そして知らない声。
ねぇお父さん、Aはいつまでここにいればいいの？嫌だよ、怖いよ。
涙を流しながらどうする事も出来なくて震えていると、いつの間にかに誰の声も聞こえなくなった。
みんなどこ行ったの？
暗くて狭い空間から出ようと光に手を伸ばした瞬間──
ガタッ
何かがクローゼットの扉に当たった。
隙間から、暖かくて生臭いものが流れ込んでくる。父から預かった書類を遠ざけ、その液体に触れる。手を、服を、足を、染め上げたのは……赤。
「おとう、さぁ……おかあさ……ッ」
嫌だ、怖いよ。怖くて、怖くて、必死に扉を押す。ここから出たい、ここにいたくない。
でも、扉に寄りかかる何かのせいでビクともしない。
「だして、A悪いことしちゃったの？……怖いよ、出して……ごめんなさいッ、だして、」
殴り、爪で引っ掻き、肩で当たり。
何度も何度もそれを繰り返して、やっと少しだけ扉が動いた。
僅かに空いた隙間から外を見る。
「ヒュｯ」
アカ。あか。赤。
この赤い色の水が何なのか分からない。でも、これはダメなものだって分かった。
そして、扉に寄りかかっているモノが何なのか分かった。
「おと……さ、おとうさん……ねぇ、」
隙間から服を掴み、引っ張る。何度も、何度も、引っ張る。寝てる、何で？お母さんも遠くで寝てる。どうして？
怖くて、寂しくて、ボロボロと涙を零していると、隙間から差し込んでいた光が無くなった。
誰かが、いる。
目の前に、誰かがいる。
恐る恐る顔を上げた。
逆光の中、ニヤリと歪に歪んでいる口。
その時、私はハッキリと顔を──
暗転。
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蛇狐(プロフ) - #ゆー@金欠民族さん» ありがとうございます！自分のペースで頑張っていきます！ (2020年12月11日 16時) (
レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
#ゆー@金欠民族 - 後編決定おめでとうございます！！ばちくそにおもろいです！！ ゆっくり、ゆっくりでいいんで続き待ってます！！ これからも頑張ってください！！ (2020年12月10日 20時) (レス) id: 3046ae6781 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - 妖々 梅雨里さん» 仕事の都合上、更新するペースはまちまちになってしまうと思いますが、頑張ります！ (2020年9月12日 21時) (レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
妖々 梅雨里 - 更新ゆっくりと頑張ってくださいね〜無理をしたらちょっと……ね〜。 (2020年9月12日 12時) (レス) id: f5b2ce54f6 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - アズライト@pitterさん» ありがとうございます！これからもビシバシと物語を進めていきます！ (2020年8月20日 0時) (レス) id: a06b5d42fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蛇狐
| 作成日時：2020年8月19日 8時
