episode24 ページ24
「押そうか？」
tn「いや、大丈夫や。まずそもAのその手じゃ痛くて押せへんやろ」
私たちはあの後そのまま執務室を出てゆっくりと衛生部の診療所とやらに向かった。
トントンは慣れたように車椅子を滑らすが、グルッペン総統が押していたのを思い出して声をかけるも断られてしまった。
そんな中他愛のない話をしながらゆっくりと進んでいくと、ふいにトントンは車椅子をとめた。
「どうしたの？」
疑問に思い振り返って聞くも返事は無い。
傷が痛むのかと彼へ手を伸ばすも、彼は俯いてぎゅっと拳を握りしめており、伸ばしかけた手を思わず引っ込めた。
暫くの沈黙の後、トントンは「ごめん…」と小さく呟いた。
tn「約束……守れんくてごめん。お前を迎えに行くって言ったのに、俺…」
トントンが他国の人に引き取られ孤児院を出るとなった時に交わした約束。
──いつか絶対お前を迎えに来る
小指を結んでそう言った彼の言葉を信じて、いつか会えると信じて、彼を送り出した。
でも、待てど暮らせどトントンが迎えになんて来ることはなかった。
忘れちゃったんだ…そう虚しく街を歩いていた時に軍服に身を包んだタミーラと出会い、彼女の紹介で私は孤児院を抜け出して軍学校へと入学したのだ。
あの約束覚えていてくれたんだ。
tn「俺、この国に来た時にグルッペンに反乱軍に誘われて革命を起こしたんや。二年前にやっとそれが落ち着いて、Aを迎えに行ったんやけど、三年前に孤児院から突然居なくなったって聞いて……俺…」
「トントン…」
多分、この傷や今までの軍での仕打ちを聞いた彼は自分のせいで私がこうなったって思ってる。
眉を下げて悲しそうに瞳を揺らす彼に泣きたくなった。
違う、トントンは悪くない。
「違う、違うよトントン。トントンは約束を守ろうとしてくれた。破ってなんかない。私が…私が我慢できなかっただけ」
──トントンはトントンのやりたい事を
──私はわたしのやりたい事を
それぞれがやりたい事をやっただけ。ただそれだけの事だ。
「でもさ、トントン。またこうやって私たち会うことが出来たんだから、それでいいじゃん。過去の事は過去の事、悔やむんじゃなくてさ…こうして会えたことを喜ぼうよ…ね？」
ぎゅっと握りしめている拳にそっと手を置くと、彼はハッと目を見開いた後に嬉しそうに顔をほころばせた。
tn「せや…な」
また会えて嬉しいよ。
そう伝えると彼は照れくさそうにはにかんだ。
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蛇狐(プロフ) - イチゴダイスキさん» へへへ、ありがとうございます！(神様では)ないです。 (2020年12月13日 15時) (
レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴダイスキ - え？え？え？神様ですか？そうですね？なんでこんな神作品作れるですか！！もう無理好キィ(鼻血) (2020年12月12日 20時) (レス) id: f02fd4c99a (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - ゼネヴァンスさん» ありがとうございます！これからも隻脚をどうぞ宜しくお願いします！v (2020年8月10日 1時) (レス) id: a06b5d42fa (このIDを非表示/違反報告)
ゼネヴァンス(プロフ) - お気に入り1000人以上になりましたね！！！おめでとうございますっ！！！！ (2020年8月10日 0時) (レス) id: d6da2f5e2e (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - 紗稀さん» ひぇ……とてもありがたいお言葉ありがとうございます！読者さんや相互さんのお陰で成り立ってるようなものなので……笑 頑張って更新していきます！v (2020年8月9日 23時) (レス) id: a06b5d42fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蛇狐
| 作成日時：2020年7月29日 17時
