忘れたいわけじゃない

29話 ページ31

楢崎side

伝えるつもりなんかなかった
このままずっと…応援して
Aちゃんの傍にいれたら…なんて
生ぬるいこと考えていた、けど。

『それだけ…なんです笑』
『なんでか泣けてきちゃって！笑』

辛いはずなのに、俺のことさえ気遣って
笑顔を作る彼女の表情を見て思った

_俺ならこんな顔…させないのに

そう思ったら、もう口に出ていた

楢「俺じゃ、ダメなの…？」

なんてくさい言葉だろう
けど、俺にはこう言うしかなかった

もちろん困っていた…
困っている顔も可愛い…なんて
でも俺は困らせたくて言ったんじゃない

楢「ごめん…Aちゃんは聡が好きなのに」
楢「困らせたくて言ったんじゃないんだ…」

そうして
Aちゃんの小さな顔に触れる

楢「それは…わかって欲しい……かな」

手から伝わる温もりに
幸せだなんて思ってしまう…

『……』
楢「何も言わなくていいんよ…笑」
楢「ごめんね」

Aちゃんの頬から手を離す
すると、雨音の中からか細い声が聞こえた

『あや…まらないでください…』
楢「…そっか」
楢「ありがとう笑」
『…』
楢「ま、Aちゃんは一途やけん」
楢「聡が好きなのは知っとるから…笑」
『はい…笑』

はい、彼女はそういった
その言葉に…あぁ、振られたかと思ったけど
けど、やっぱり好きだと…実感してしまった

楢「あ、言っておくけど」
『はっ、はい！』
楢「諦めるとは言っとらんよ」

そうだ、諦められはしない
傍にいたい。けど、いるだけじゃ足りない
自分がこんなにわがままだったなんて…

Aちゃんの顔はみるみる赤くなっていく

楢「何赤くなってんの笑」

そう笑って、また歩き始める
ちょこちょこと着いてくるAちゃん

『な！楢崎さんが変なこと言うから！//』
楢「ふはっ笑」

反応も、動きも…好きだからか
全部。全部…

楢「やっぱ可愛い笑」


Aちゃんの好きな人には
きっとなれない…けど

今、隣にAちゃんがいる
同じ傘に入っている…こんなんで喜ぶなんて
幼いかもしれない。けど、本当に









…幸せだ

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