忘れたいわけじゃない

16話 ページ18

『なっ！なんでですか！？』
聡「えっ…いや、仲良いから…」
聡「Aちゃんがあんなすぐ打ち解けるって…珍しい感じだし」
『そっ、いや楢崎さんはそういうのじゃ！』
聡「そっか…」
聡「…良かった笑」
『もう…びっくりしました…』
聡「ごめん笑」
聡「いや…楢ちゃんからよくAちゃんの話聞くしさ」
聡「楢ちゃんとは連絡し合ってるのに…俺のはまだ…だし」
『そ、それは…すみません//』
聡「えっ？あっ、いや俺もごめん！焦」
聡「今なんか変な事言っちゃってたね…気にしないで！」
『はっ…はい』
聡「……じゃ…あさ」
『はい？』
聡「…」
聡「俺の…ことは」
『えっ…』
聡「俺のことは…まだ、好きでいてくれてる？」
『…』

その時、身体中の力が緩んだ
さっきまでの会話と、もう空気が違う…
袋を落としそうになったけれど…動揺を見せまいと…ぎゅっと握り直して堪えた…

そこからはもう必死、真っ白な頭を
必死に、必死に動かした…けれど何も出ない
いや、そりゃそうだ…あんなにすぐ周りにバレたんだから本人にわかんないわけない…そうだよね

瞼が熱を持って…流しちゃだめなのに…
涙が、次々と流れてしまう

『……はい』

口から出た精一杯は…夜に流されてしまった

聡「…」
聡「そっか」

私は言葉が出ない…藤原さんを見ることも…
唇を噛んで、俯くことしかできない
そんな私の頭を撫でて藤原さんは…こう言った

聡「ごめん…傷付けたね……」
『っ…』

私は…謝って欲しかったんじゃない…
ただ…ただ……って…自分が何を求めているかも
もう、何も考えられない…

聡「Aちゃん…ありがと……」
聡「…ごめん」



その一言を最後に、私たちの会話は無くなった
ごめんの意味も…何もわからないまま

17話→←15話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す