お母さんとお父さん ページ3
お父さんは私が小さい頃に死んじゃった。
鬼、っていうのに殺されちゃったんだって。
お母さんは仕事をたくさんするようになった。
今考えると、私を育てるためだったのかもしれない。
私は、ずーっと家の中にいた。
お外は危険なんだって、いっつもお母さんに言われてたから。
夜は特に危険なんだって、鬼に食べられてしまうって。
時間をちょっとだけ止めて、私だけの世界。
ちょっと早めて、巻き戻して。
村の子供たちは、私のことをみんな化け物ってよんだ。
「ばけもの」
お父さんを殺した鬼と同じなのかな。
化け物の私なら、鬼とは仲良くなれるのかな。
私が、えっと・・・何歳になったときだっけ。お母さんは私に御守りを作ってくれた。
青空みたいな布に、雪みたいな白い糸で「A」って刺繍してくれた。
中には薄紫色の花が入っていて、ちょうちょ結びの紐の先には鈴がつけられた。
ばけものの私は、ずーっと家の中にいたの。
お外が静かな時だけ、空を見たり、花を摘んだりして遊んでた。
いっつもひとりぼっち。
喋れない「化け物」の私と遊んでくれる子なんていなかったの。
「いい、A?お母さんが寝たら、このお金を持って町の方に逃げるのよ」
「森の方へは行ってはいけないの・・・こわーい鬼がいるからね」
「そしたら、誰かに声をかけて。お世話になったら、このお金を渡すのよ」
「他には、このお守り・・・・・・これで首にかけられるね」
「それから、あの羽織を着ていきなさい、暖かいから」
「夜になったら、出来るだけ明るいところへ行くのよ、人がたくさんいるところね・・・変な人にはついていっちゃだめよ」
「・・・そうだ、この村は今日中に出るのよ、絶対に」
「・・・分かった?」
うん、分かったよ。
「大丈夫ね」
「あなたはきっと、出来るから」
その後、お母さんは寝ちゃったの。
私は鞄にお金を入れて、他にも鉛筆とか、飴とか、雑記帳とかを入れて・・・お母さんは起きなかった。
手がひんやりしてた。
「いってきます」って心の中で呟いて、私は走り続けた。
息が苦しくって、空気が冷たくて、手が凍っていくみたいだった。
町について、日陰で休憩した。
小さい頃にお父さんから教わった、不思議な方法で息を吸ったら元気が戻ってきて、また走れたんだ。
でも限界が来て、倒れそうになったところに黒と青の髪が見えて、その手をとったんだ。
私と違って、あったかい手だった。
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トムジェリ(プロフ) - 初めて読ませていただきました!これからも更新頑張ってください!! (2020年6月6日 0時) (レス) id: cc774e2595 (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - にゃんこさん» 作者は可愛くないですが可愛い女の子が大好きなので!これからも可愛いを生産できるように頑張ります!コメントありがとうございます! (2020年3月15日 9時) (レス) id: dcec4ba55e (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ - 全て可愛いで構成されたお話ですね。思わず鼻血が(( 作者様自身が可愛いからきっとこのようなお話を書くことが出来るのですね!作者様は可愛い生産機ですね!!!!??? (2020年3月15日 0時) (レス) id: a2fa91df99 (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - みぃさん» コメントありがとうございます!楽しんで読んでいただけているようで何よりです・・・! (2020年3月8日 19時) (レス) id: dcec4ba55e (このIDを非表示/違反報告)
みぃ - いやー読んでて楽しいですね!!!続き楽しみにしてます!この先もたくさん書いてください!みんなに愛されてみてるこっちも幸せですぅ 次の作品も楽しみにしてますので、よろしくお願いします! (2020年3月8日 12時) (レス) id: a7a20ec0a3 (このIDを非表示/違反報告)
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