Dr.ロレイスの提言 (ページ16)

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Dr.ロレイスの提言１５ページ16

8月29日 10:00
管理者:Dr.ロレイス
サイトC:フロアF/S-324.1

分かってる。分かってるんだ。

提供された幼子も問題なく、時間が止められたかのように保存され続けている。研究員達は日々各々のやるべき事をやっている。以前よりも真面目に、いや以前も真面目だったが、幼子を受け取って以降はより真面目に取り組んでいる。その研究は順調だが、まだまだ数年かかるだろう。だからと言って、今は今でやるべき事が多い。分かってるんだ。

だが、親友が、サンシャが行方不明になったと聞いて、それでも研究棟に居られるか！？

分かってるんだ。
彼は賢いし冷静だから、何かに巻き込まれたとしても正しい選択ができる。捜索隊も沢山出されているし、彼の作ったロボットまでも捜索に駆り出されている。二十四時間、ずっとサンシャを探している。私一人が彷徨いたところで、また巻き込まれるだけだと、分かってるんだ。だがじっとしていられない。

彼は嬉しそうに実家へと帰省し、一昨日には研究棟に戻ってきている予定だった。私は彼の話を楽しみにしていたし、彼の母親が作るシフォンケーキも楽しみにしていた。休暇の話、実家の話、街の様子、彼の父と母のこと、それを話してくれる彼の、その話が楽しみだったんだ。何気ない彼の休暇の、日常の、そこから毎回繰り返す思い出話の時間を私は待っていたんだ。私は昔からサンシャの母親が作ってくれるフワフワのシフォンケーキが好きだった。この歳になっても彼の家を訪れると、サンシャの母親は作ってくれる。それが嬉しくて、少し気恥ずかしくて。それを持って実家に帰り、父母と美味しく戴く食後のティータイムが幸せで。

それをサンシャと話すのが嬉しくて。

彼は無事なのだろうか。
彼の身に何かあったら私はどうすればいい？私は彼の背中を追いかけてきた。彼に助けられてきた。なのに私は助けられないのか？何も力になれないのか？

与えられるばかりなのか？

そうだ、私達にはマイクロチップが入っている。大丈夫。すぐに見つかる。大丈夫なはずだ。この国のどこにいたとしても、研究棟のレーダーはマイクロチップの信号を、どんなに弱くても拾い上げる。大丈夫。私は彼の父母に連絡をとって、そのようなレーダーがあることを教えて、安心させなければ。大丈夫。大丈夫だ。

きっとサンシャは帰ってくる。大丈夫。