Dr.ロレイスの提言１０ ページ11
8月5日 15:53
管理者:Dr.ロレイス
サイトC:フロアF/S-324.47
ここに来てあっと言う間に一ヶ月。サイトCは帰省した者がそんなにいないせいか、普段と変わりなく人が行き交っている。サイトBや、研究棟全体がどのようなものかは分からないが、我々の職は休みなんて関係ない。研究自体が仕事でもあり趣味であり、研究棟が仕事場と家だ。そのせいで不健康だと言われることが多い。これは否定できないな。
私が研究員を目指したきっかけは何だったろうか。ずっと昔のことだから曖昧だが、ええと…そうだ、ニュースで見たんだ。人型の猫、猫型の人、一部が猫だが人の外見を多く持ち、人の言葉を話す猫のような人。それが遺伝子操作により生み出され、当時問題になっていた外包地、サイトNも外包地にある作業区画の一つだが、ここに大繁殖していた害獣を狩って成果を出した。Dr.シェルフ…だったかな。申し訳ないが私は当時とても幼かったから、そう深く考えずにニュースを見ていた。あの人、機械を使っていて格好いいって具合にね。後になって調べたところ、確かに成果は素晴らしいものだったが、遺伝子操作による生体の姿形や、そもそもの出生数、寿命の差、その他幾つかの不安定な要素が消しきれなかったようだ。
安定供給が難しく、理想的な育成が困難で、一見揃った外見としても猫程の寿命しか持たない個体が混ざっている。母体を必要としない、培養装置を使った繁殖計画こそ順調だが、結果がダメだった。一撃となったのは愛護団体の抗議と、襲撃、そして勝手に外包地へ侵入し、貴重な個体達を連れ去ってしまったことだ。分かるか？扱いを心得ていない一般人が、人工生命体を持ち去る！それは猫ではなく、人でもなく、人の子でもない！食べる物はキャットフード、肉や魚、人の食事…ではなくカロリーバーだ。あれらは狩猟の腕前こそ見事だが、胃腸が繊細で、必要とする栄養も本来の生命とは全く異なる。結果は明白だな。愛護団体はあれらを弱らせ、衰弱死させた。幸いにも保護団体の職員を狩猟対象とする個体はおらず、懐くこともなかったが、攻撃することもなかった。
だがあれが私のきっかけだ。あれを作った研究員が私のきっかけだった。何事も失敗と改善、実験、検証、それを繰り返して完成に近付いていく。私はいつかあの猫達、金華猫を完成させたいんだ。
まぁ、今の研究を終わらせてからになるが…十何年後には着手できるだろう。
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