常勝神話３【ONE PIECE】 (ページ10)

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第一話…青年の怒りページ10

体格こそ違えど、ラグとゴンドーリラはほぼ同格の腕力を持っている。お互いがお互いそれを察し、さらにお互いの行動を読もうと神経が張り詰められる。自分のスタミナが切れる前に速戦即決でラグを潰したいゴンドーリラは、大斧を振り上げ体重を乗せた一撃を繰り出す。体重面で勝ち目のないラグは、構成員達が海賊を制圧する時間を稼ぐためスタミナ頼りの持久戦へと誘い込み、まずは数歩引こうと腰を落とした。

巨漢の一撃が砂埃を巻き上げ炎を断ち切る。

すると地面から鋭い石柱が勢いよく生え、海賊頭の手とラグの腿を掠めた。驚いた海賊頭は大斧を一振りして石柱を砕き、ラグはヨルハッドを掴んでいたその手を離してしまう。

驚いて振り返ったラグは、ヨルハッド越しにナットを見付けた。

(…俺も？俺らも？なぜ？)

青年の向こうにナットが見えた。
石柱に胸を貫かれ、炎に炙られるナットが見えた。共に戦い続けてきた後輩が、刺激臭を発する黒煙を受けて、炎の中に消える様子が見えてしまった。

ラグは不運にもナットの最期に気を取られた。

時間にしてたったの一瞬。
刹那でしかない極わずかな間。

しかし二度目の〈事を見逃した不運〉だ。
スチル街に悲劇が襲いかかるその瞬間を見逃した不運と、後輩の成れ果てを目にした不運。この不運は致命傷に成りうるらしく、運命の女神はラグを見捨て、ある意味勇ましいヨルハッドへと移ってしまった。

運命の女神に見捨てられたラグの視界が、大きく揺れて白く染まる。息がつまり呼吸の仕方を忘れかけたが、ギリギリ致命傷となる石柱での攻撃を反射的に回避した。しかし負った傷は浅くなく、今すぐに撤退しなければ失血死するのは明らかだ。

(くそっ、何がどうなってる！？)

怒りに顔を歪ませるヨルハッドが見える。
鋭い石柱はヨルハッドを守るかのように、彼の周りをぐるりと取り囲んでいた。