常勝神話３【ONE PIECE】 (ページ8)

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第一話…青年の怒りページ8

もたげられた疑問の鎌首は、ラグの脳裏で揺れ動く。

革命軍も大きな組織となりつつある。
当然、組織が大きくなればなるほど、様々な考えを持つ者が多くなる。方向性こそ同じだとしても〈革命〉に向ける意識の細部や過程は人それぞれだ。越えたくない一線も、抱いている義理人情も、一人一人レベルや性質が異なる。ゆえに組織内での小さな衝突は避けられないし、派閥も生まれ始める。

鎌首の揺らぎに考え込んでしまったラグは、不運にも街に悲劇が襲いかかるその瞬間を見逃した。まぁ見ていたところで何が出来ると言う話ではあるのだが、少なくとも初動は早かっただろう。

たった一瞬。
たった一瞬の合間に、スチル街工場区画の一角が爆発に飲み込まれる。工場と工場の合間を流れる工業用水路に渡された鉄板橋は、あまりの爆風にガタガタと揺れ、あちこちから悲鳴のような軋みが聞こえた。離れた位置にいるラグにまで衝撃が届く大爆発は、その後も二度三度と繰り返され、異臭を含んだ黒煙は茜色の空を覆いつくす。

黒煙が風に流される。
微かな刺激臭のするその中で、ラグはスチル街に目を凝らした。

「…ヨルハッド…？」

視界が悪くなるばかりの夕暮れ時。
工場から吹き出す炎は隣の工場へと燃え移り、近くにいたスチル街民にも引火する。悲鳴を上げて転げ回る人を、ヨルハッドらしき青年は飛び越えて…彼が片手を上げた瞬間、周囲の地面から矢じりのような形状の大きな青黒い石柱が出現した。踏み固められた港の地面を突き破り、トタン屋根を吹き飛ばし、それは海賊とスチル街民の区別をつける様子もなくグサリと貫く。

燃え広がる炎が石柱を伝う血を飲み、パチリと火の粉を吹き上げた。

火の粉の向こうに、海賊頭ゴンドーリラが立っている。ひとしきり暴れ回った若者は、その海賊頭を凝視して立ち止まった。ゴンドーリラの手には〈木こりの大鉈〉が握られ、威嚇がてらにガツンッと石畳が叩き割られる。

(…彼は…一体何を…。)

何を思ってヨルハッドが暴走したのか、考えても考えてもラグには分からない。ヨルハッドの中の何かが爆発した、その何かが何なのかラグには分からない。