常勝神話３【ONE PIECE】 (ページ6)

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第一話…青年の怒りページ6

急がないと…とラグとナットは突き進む。
木漏れ日の降り注ぐ獣道を辿り、大ダコのようにうねる大樹の根を潜り抜けて行けば、不愉快な港の喧騒すらも、小鳥のさえずりに消されて聞こえなくなる。

「ん？何か聞こえないか？」
「避難所が近いのかもしれませんよ。」
「いや…ちょっと様子がおかしい。慎重に行こう。」

ラグの指さす方には、話に聞いた避難所と同じ特徴を持つ、ずっしりとした丸太の家が建っている。だが身を隠して近寄ってみれば、避難所と呼ぶにはあんまりな光景が広がってきた。騒いでいるのは山賊ばかりで、屋根の上にはセモアディゼル海賊団の旗がなびき、助けを待っている者は一人も見当たらない。

「遅かったか…セモアには山賊出身の海賊もいるんだな。これは厳しそうだ。」
「遺体は見当たりません。どこか別の場所に避難したのかも。」
「そうだな。よし、周囲の痕跡を探そう。」

淡い期待を胸に痕跡を探し始めた二人だったが、努力のかいも虚しく、誰も何も見つけられないまま人の手が入っていない崖に出る。皮肉にも崖から遠目に見下ろすスチル街は賑やかなものだ。人の往来も多く、港は船で溢れ、買い付けに来る客の多さもなかなかである。

あれらが海賊とその客でなければ、どれほど良かったことだろう。

「先輩、セモアのあれ…過剰な戦闘準備だと思いませんか。モックタウンにまた攻め込むつもりなんですかね？」
「そうだろうな。様子からして二、三日のうちに動き始めるだろう。それに合わせて俺らも動こう。」

街が一望できる崖の上で、ラグはざっと目を走らせた。

港には櫓やらテントやらが置かれている一角があり、街を監視する海賊の姿があちらこちらに見える。港から五十メートル離れたところに工場区画の入口があり、さらに奥へ進めば東の貧困街になっているようだ。貧困街の周辺は土嚢やら木枠であからさまに区切られ、工場従事者達を逃すまいとばかりに木組みの監視塔が建てられている。

「ナット、頼んでもいいか？」
「もちろん。」
「ヨルハッドを連れて貧困街への潜入を頼みたい。避難させられそうならそのまま避難させてくれ。」
「了解。任せて下さい。いますぐ行ってきます。」
「頼んだ。気を付けてくれよ。」