常勝神話３【ONE PIECE】 (ページ33)

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第四話…オグリの消滅ページ33

ヨルハッドは吐き捨てた。

そう言う人だったんです。
腐っちゃいけない、そんなことが言えてしまう強い人だったんです。強い人には弱い人の気持ちが理解できません。自分ができたのだから相手にもできるのだと素で思っているのです。そう言う人だったんです、と。

青黒い石の棘が生え始める。

冷静に考えたら気付くはずだ。
ヨルハッドはオグリではないし、その逆もまた然り。私は貴方ではなく貴方も私ではない。しかしそれに気が付けないのが当事者であり、気付かせないのが神話である。蘇り、生まれ変わり、転生、再来、そう言った言葉で神話は神代と現代とを結び付ける。人間自体、自分と他人の区別が付けられる者は多くない。

ロウソクの揺らめきの影でヨルハッドはグシグシと泣き、青黒い小さな棘が生えては崩れてを繰り返す。その傍ら、ハインは蛾の目の風でサボとゴンドーリラの一騎打ちを観測していた。

海賊頭が倒れそうだ。

ハインは小型通信機を手に、連絡を今か今かと待っているだろう相手に呼び掛けた。同時に荒波の短剣がヨルハッドの首筋を掻き斬り、二対の翼が青黒い石柱をひらりと躱す。祭壇に血飛沫が付き、先程まで悪神の如き大暴れを見せていた青年は、呆気なくもがいて死んだ。

彼の一生には同情しよう。
しかしそれはそれだ。ヨルハッドは指名手配犯である。生い立ちや事情がどうであれ、海軍から見てヨルハッドはティミ諸島を荒らす能力者でしかない。そして情報局の使命である〈海軍優位〉を基礎に置いたハインの特殊な損得勘定は、悪神オグリの力を継承した能力者は討った方が有益と判断した。

所詮は未熟な超人系。
だがこの島にとっては悪神の生まれ変わり。殺せは島民は安堵するし、彼の家族はもう居ないのだから賠償も謝罪も必要ない。ティミ諸島を襲った一連の明確な原因として利用できるのならば、指名手配犯一人の命くらい軽いものだろう。

「ドフラミンゴさん、ゴンドーリラが倒れました。よろしくお願いします。」
『フフッ！』

七武海の笑い声。
続く様に聞こえる砲撃の音。
短剣に付いた血を落としつつ鐘楼の天辺に舞い上がったハインは、クス湾を包囲している海賊船団を目にした。帆に描かれているのは三又の槍を咥えた魚のシンボルだ。それぞれの船首に掲げられた大きな篝火が横一列に並び、再び迫る雨雲の下で船団の規模を誇示する様に燃え盛る。

マカラ漁業組合の海賊達が、ドフラミンゴに連れられてやって来ていた。