常勝神話３【ONE PIECE】 (ページ27)

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第四話…オグリの消滅ページ27

あからさまな『来い』とのアイコンタクトに、ハインは小さな息をつく。流石は参謀総長ともなれば、戦場と把握くらいはそつなくこなせるらしい。まぁそれでも腕は二本。何かを守ろうにも限界がある。

血混じりの地面は本降りの雨にぬかるみ、馬が水溜まりを踏み抜いて嘶く。工場から漏れ出たオイルは炎を走らせ、その中に建つ教会の厳格かつ荘厳な佇まいは健在だ。寄り添うように建てられた鐘楼の遥か上部は崩れ落ち、大きな鐘がむき出し状態となっている。しかし鐘楼は地中深くに根を張ったかの如く、そして教会はどっしりとその場に腰を据えて建ち続けていた。

距離にして約三十メートル。
腰布の端がふわりと動く。

風が渦を巻き、砲弾となって天然港を占領する海賊船へと降り注ぐ。急な出来事に海賊達の意識が船へ集まり『革命軍のクソ野郎！！』等との罵声が響いた。自然と戦線は海賊船側へ移ろい、攻防を繰り広げる両勢力は教会から少し離れる。

とてほんの少しだけ。

この機会を逃すまいと駆け出したハインは、炎の揺らぎに生まれる影を伝いながら、崩れかけた教会へと踏み込む。青黒い棘を避けて岩窟状の隙間を潜り、蛾の目の風と共に奥へ進むと…外の乱戦が嘘かと思えるような、自然に還りつつある廃墟に似た神秘性を纏う空間に出た。

崩れた屋根の隙間から覗く梢の影。
ロウソクの光を受けた白磁の祭壇には女神像が立っている。豪華ではないが繊細な彫刻と壁面装飾の数々が、清閑の地に居を構えられた女神像を囲んでいた。

御座すのは時を司る女神ティミだ。

クーザ海域において主神と呼ぶべき女神は、時そのものと同時に、海域を囲むに至ったバリアリーフや諸島も象徴している。特に鍛冶のスチル街では鉱石をもたらしてくれる存在として大切にされ、どの工場にも祭壇が据えられているらしい。