常勝神話３【ONE PIECE】 (ページ16)

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第二話…セモアディゼルページ16

驚いたせいだろう、艦隊を押していた蛾の目の風がピタリと止む。土砂降りの中、一瞬の静寂が望まずして艦隊に訪れ、艦隊前方からヒュルルと砲弾の落ちてくる音が明白に聞こえた。海賊船団の一斉砲撃が嵐を潜り抜けて、海軍艦隊に降り注ぐのだろうと新兵ですら感じ取る。

しかし、彼らが乗っているのは軍艦だ。
戦闘に特化した装備満載の軍艦である。

スモーカーの号令に即応した将校らは、半ば条件反射に近い速度で砲撃を開始した。大雨による視界不良と荒波による標準のズレをものともせずに、彼らはセモア海賊船団のそれなど比ではない高密度の一斉砲撃を撃ち上げる。雨雲を揺さぶる砲声は海賊船団のそれらを相殺したが、爆煙によって元より霞んでいた視界はついに数メートル先も見えなくなってしまった。

「ハイン、この煙流せねェか？」
「今流れますよ。」

言い終わるよりも早く、蛾の目の風が煙を押し流す。海軍艦隊はスモーカーの指揮の元、再度海賊船団に狙いを集中させ、訓練通りに砲弾を叩き込んでいく。

こうなると勝敗はすぐだった。

バケツをひっくり返したような大雨の中、海賊船が沈んでいく。一隻だけは取り調べるために残され、その他の三隻は鮫の回遊する黒い海に飲み込まれていった。

「これじゃあモックタウンも大変そうだな。ほらハイン見てみろ。あそこにもセモアの船団がいるぞ。」
「嵐から逃げていますね。追いますか？」
「いや、お前マカラに呼ばれてんだろ。早めに行ってやろう。」

海賊船一隻を鹵獲した海軍艦隊は、荒れる波を味方につけてモックタウンへと舵をとる。水平線には既にジャヤの島影が見えていて、西の雲間からは陽の光も差し込んでいた。黒い雨雲はゆっくりと遠ざかり、明灰色のややもったりとした雲と入れ替わっていく。あと十数分もせずに晴れるだろう兆しを見たハインは、後をスモーカーに任せて船内へと戻ることにした。