常勝神話３【ONE PIECE】 (ページ13)

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第二話…セモアディゼルページ13

湿った風が軍艦を押す。
小高い波にマストが軋む。

「おっと気付かれたな。」

セモアディゼル海賊団の一部だろう、中型木造船四隻からなる海賊船団が動きを変え、海軍艦隊へと向かって来る。しかし海軍艦隊は既に戦闘態勢を整え、海賊達が砲撃の射程圏内に入るのを待つばかりとなっていた。艦隊の中で唯一の小型軍艦、もとい改造軍艦セントエルモ号も同じく迎撃態勢を整え、敵の砲撃を警戒しつつ波を乗り越えた。

「スルセンブルクは善意なんだろうが、派手にやり過ぎると疑われるぞ。」
「そうですね。」

海軍の砲撃範囲に入るよりも早く、海賊達が撃ち始める。轟く砲声は曇天に反響し、セントエルモ号の十数メートル手前に落ちた。大きな波が船を揺らがせ、配属されたばかりの新兵達があわあわと姿勢を崩す。

「ちっ。俺らの大砲より飛距離があるな…噂の新型か？」
「あれらの大砲は全て一時代昔の物ですよ。」
「確かなのか。」
「はい。」

ゆらりゆらりと海面がうねる中、艦隊も応戦を開始した。海賊と海軍の撃ち合いは大気を揺さぶり雲を振動させ、ぽつぽつと降っていた雨は次第に勢いを増していく。レインコートを羽織ったハインは、雨を気にせず走り回る海兵達を他所に、吐かれた側から雨風に流される紫煙を見ていた。

スモーカー愛用の葉巻は、とても渋い香りがする。潮風に散らされようと薄まることのない、渋くて濃い香りだ。風の中をうねりながら流れていく煙は生きているかのようで、だからついついハインは煙の流れる先を見る。