第一話 夜明け前の火柱 ページ3
初夏の空には雲ひとつなく、心地の良い潮風がマリンフォードを吹き抜ければ、そよりそよりとヤシの葉が揺れる。港にはカモメの鳴き声がよく響き、遠くからは鐘の音が聞こえた。
海軍本部の大きな食堂は談笑に溢れ、訓練所の木陰では昼寝大会。街へランチしに行く者も多く、おかげで本部の目の前にある広場には移動販売店が集まっている。
そんな賑わいを見下ろす元帥室。
大窓に掛けられたすだれ越しに、強い日差しが細く差す。元帥の机の上にはアイスコーヒーが注がれたタンブラーと、暑中見舞いらしき箱が幾つか、茶色のファイルは何枚も積まれ、それぞれに貼られた付箋がそよ風にピロピロとはためいた。
休憩中だったセンゴクは、数分前に持ち込まれたとある最終報告書を捲りつつ、どうしたものかと目を細める。その報告書を持ってきた年頃の娘は、来客用のソファに座って未整理の書類を手に口を開いた。
「場所はジャヤ沖合です。周辺の島々に被害は出ていないそうです。」
「ふむ…。」
彼女の名はハイン・フローラル。
燕尾に似た白の軍服を腕捲りし、胸元には紺のリボンが結ばれている。素肌を覆い隠すような黒のアームカバーをつけた右腕はアイスカフェオレを持ち、もう片手はペラリペラリと書類をめくっていた。あまり肌を出したがらないのだろう。首元まで紺色のハイネックで隠され、捲られた軍服の袖からは、その七分袖が覗いていた。
灰色の長髪と瑠璃の目を持つ彼女は、若いなりにも情報局を率いる局長としてこの場にいる。何もせずに座っていれば広報の事務職員に間違われそうな小娘だが、これでも彼女は現役の中将だ。
「襲われたのは政府協賛企業の貨物船ですが、その政府からは指示もお話も頂いておりません。情報局から事実確認をしたものの、何も起こっていないとのことでした。」
やれやれと首を振るうセンゴクは、涼し気な音を鳴らす風鈴を見る。遠くからは訓練時とは異なる海兵達の賑やかな声と、街の喧騒が聞こえた。魚の群れでも見つけたのか、海上ではカモメが騒がしく飛び交っている。
「マカラ漁業組合員が、取引の現場を確認しています。特徴からして政府上級役人と、モックタウンの海賊でしょう。」
「協賛企業だけなら流せたものを。聖地の役人まで関わる取引となれば、考えなければなるまい。」
「海賊が生き残っていたら良いのですが…。」
「期待できなさそうだ。役人らも後片付けの手腕だけはいい。面倒なことになったな。」
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poidf(ポイドフ)(プロフ) - 誤字も見付けたら教えてくださいまし (11月18日 18時) (
レス) id: 24e80c86dc (このIDを非表示/違反報告)
poidf(ポイドフ)(プロフ) - どこかにルビ振る為の■が混ざってるかもしれません。混ざってないかもしれない。忘れましてよ。見つけたら教えて。 (2023年3月7日 22時) (レス) id: 24e80c86dc (このIDを非表示/違反報告)
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