第三話 ネモエリア ページ16
(怖…あれは助けられない。)
するりと裂け目を通り抜けてタープテント郡の近くに降り立てば、既に東の水平線には白い月が顔を出し、水面ギリギリに一番星が輝いていた。地面越しの悲鳴と破壊音は十秒もせずに静まり、大草原には心地の良い草擦れと波の音が戻ってくる。しかし静けさは続かず、真下から突き上げるような衝撃がハインを襲い、嫌な音を立ててながら草原が浮き上がりひび割れ始める。どしん、どしん、と地下深くから何度も繰り返されるあまり、タープテントは一つ二つと崩れた。危険を感じたハインが舞い上がった瞬間に大地が陥没し、大地を押し退けるようにして黒い巨体が躍り出る。その様子を見て、ふと異国の言い伝えを思い出した。
地震は、大鯰によって引き起こされる。
大河に抱かれたとある地域では、そのような伝承が語り継がれている。大地の奥底に住む大鯰を要石で押さえつけ、世界は平和になりましたとさ…のような内容の話だ。まぁテーブルアイランドにナマズの住めるような川はなく、地下洞窟にある水は海水なのだが、この際それはどうでもいい。
地中から這い出てきたのは大ナマズと呼んでも良さそうな、ぬるりと黒っぽい海王類だ。しかも既に瞳孔を細めて怒っている。
海王類にしては小さい体は、それでも山のようにどっしりと重々しい。丸っぽい尾びれ胸びれは陸上でも難なく巨体を支え、地面を抉りながら這いずり回る。ぬめりのある分厚い皮膚に鱗はなく、土と草が貼り付いていた。裂けた口には鋭く細かい牙がズラリと並び、苛立たしげにガチガチと鳴る。ナマズに牙って生えていたっけか？とハインは思ったが、現に生えているのだから否定のしようがない。
最新技術により風の能力を得ている腰布が、突きつける潮風を得て軍旗のようにパタパタと鳴る。空高くからは、か細い笛が無数に鳴ったかのような音が鳴り響く。遠い未来〈パズズの遠吠え〉と例えられる音に警戒心を強めた海王類は、動きを止めつつも引き下がらずにグルルと唸った。
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poidf(ポイドフ)(プロフ) - 誤字も見付けたら教えてくださいまし (11月18日 18時) (
レス) id: 24e80c86dc (このIDを非表示/違反報告)
poidf(ポイドフ)(プロフ) - どこかにルビ振る為の■が混ざってるかもしれません。混ざってないかもしれない。忘れましてよ。見つけたら教えて。 (2023年3月7日 22時) (レス) id: 24e80c86dc (このIDを非表示/違反報告)
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