第三話 ネモエリア ページ14
つまみ食いするにはまだ早いタルトを後にしたハインは、航海士の部屋を見付けてそっとドアノブに手をかける。
航海士はおそらく女性だろう。
ポールハンガーには可愛らしい上着とショルダーバッグが掛けられ、窓辺には小さな観葉植物が育つ。南国チックなカーテンと大きな葉の壁飾りが部屋を明るく彩り、本棚には海図や関連資料、そして様々な分野の図鑑が並んでいた。ハインは本棚から文庫本サイズの日誌を抜き取ると、軍靴を鳴らして甲板に戻って行く。
次にハインが向かった先は、研究者達が潜って行った洞窟だ。そろりそろりと洞窟に入ってみればひんやりと涼しく、ポタリポタリと水の滴る音と、滑り止めのゴムシートを踏む軍靴のキュッキュッと言う音が反響して聞こえた。
入口から洞窟奥へと斜めに差し込む春の日差しは、進むほどに心許なくなる。ハインはウエストポーチのベルトに引っ掛けていた小型のオイルランタンに火を灯したが、地底へと続く闇は深く、数歩先は真っ暗闇だった。そんな地下世界を進んだ先に現れたのは、人の手が入った痕跡の見られるやや細めの細道だ。床と壁は凝った装飾こそないものの、洞窟教会に似てどことなく整然とした雰囲気が漂い、少し進めば錆びて崩れたバリケードが落ちていた。バリケードを跨いだ先からは、研究者達の声が聞こえてくる。反響している感じからして、中々の巨大空間があるようだ。先に地上の野営地を整えてからにすれば良いのに…と思いながら、ハインは細道の角を曲がり、そっと先を伺い見る。
遥かに高い頭上の裂け目から差し込む、春の暖かさを失った弱々しい光芒は、吹けば消えそうな細さで揺らいでいる。広がる空間はドームのように開放的で、その壁際にはくたびれた古いテントが平坦な地を覆い尽くすように密集して設置されていた。
(政府は…。)
政府は『テーブルアイランドに文明はない』と発表している。また『遭難する可能性が高い為、立ち入りを禁ずる』とも言っていた。
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poidf(ポイドフ)(プロフ) - 誤字も見付けたら教えてくださいまし (11月18日 18時) (
レス) id: 24e80c86dc (このIDを非表示/違反報告)
poidf(ポイドフ)(プロフ) - どこかにルビ振る為の■が混ざってるかもしれません。混ざってないかもしれない。忘れましてよ。見つけたら教えて。 (2023年3月7日 22時) (レス) id: 24e80c86dc (このIDを非表示/違反報告)
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