深夜1時 ページ4
。☆
「 ほら。取り敢えず飲んで落ち着け 」
ありがとうございます、と小さくお礼をしてマグカップを受け取る。中には並々と甘い香りを漂わせたココアが注がれていた。
警察官さんは七瀬とあたしを連れて署まで行ってくれた。七瀬の泣きそうな顔を見ていられなかったのだろう。やっぱり此の人、いい人だ。警察官さんはココアを飲みながら、七瀬に聞いた。それは聞き損ねた答えだった。
「 んで?手前は如何してまだ高校生にも関わらず彼女と夜中に外に出ようとする 」
「 そ、れは…… 」
七瀬は答えにくそうだった。あたしはそんな七瀬の姿を見ていられなくて、思わず口を開いていた。
「 七瀬、あたし知ってたよ。七瀬が2人で会う時に夜中を選ぶ理由 」
「 ……! 」
七瀬と付き合い始めて、あたしの身の回りは微かに変化し始めた。同じクラスに限らず、同年代の女子からの視線が刺さるようになった。その理由は分かっていた。
七瀬は入学した頃から皆の噂の的だった。その端麗な容姿と穏やかな性格から、誰もから人気を博していた。本人にその自覚はなくとも、彼を好きだと云う人は後を絶たなかった。それだからか、あたしが七瀬と付き合い始めたという噂は早くに広まり、女子に目をつけられた。2人で歩いているところを見られたらしい。翌日呼び出されて頬を叩かれた。七瀬に相談した。自分のせいだと泣いていた。
それからだ。七瀬が人目に付く場所であたしと2人きりになるのを避け始めたのは。過剰ともとれるほどに。
「 あたしのこと、守ろうとしてくれたんだよね。もう手を出されないように 」
「 だって、俺のせいで傷付いた。俺が傷付けた。俺が守らなきゃって、だから 」
「 あたしを傷付けたのは七瀬じゃないよ 」
七瀬は云った。
分かってた。あんな時間にAと居れば、女子に見られるのとは別の問題が発生するだけだって。けど、Aとの2人の時間には、変えられなかった。それくらい自分にとってAとの時間は大切にしたかった。
なんて云えば良かったんだろう。
口惑うあたしの正面で、また彼が口を開いた。
「 確かに2人きりの時間は恋人にとったらかけがえのない時間なのかもしれない 」
「 けどな、そんで手前らの身に何かあったら元も子もねえだろ 」
「 2人きりの時間より、手前らの命の方が余っ程大事だよ。頼むから自分の身を粗末にすんなって 」
七瀬は、泣いてた。あたしも、泣きそうだった。
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しょこたん(プロフ) - 初めまして!警官中也さんとか最高過ぎます!続き更新してほしいです! (2018年12月10日 20時) (レス) id: 130af08cdc (このIDを非表示/違反報告)
しらせ(プロフ) - キサラギさん» コメントありがとうございます!その発想はなかったけど面白すぎませんか、、、笑 中也さん不憫すぎます笑 マフィア中也さん×警察官夢主ちゃん、、、それはそれで面白いかもしれませんね笑 ありがとうございます! (2018年8月24日 6時) (レス) id: d14bf30071 (このIDを非表示/違反報告)
キサラギ - タイトルだけ見てるとマフィアの中也が (身長のせいで) 警察に補導されたのかと思って笑ったw (2018年8月24日 0時) (レス) id: 0f45599fe0 (このIDを非表示/違反報告)
しらせ(プロフ) - 乃杏さん» コメントありがとうございます!夢主ちゃんと中也さんが色々すれ違っちゃうかもしれませんが、また暖かい目で見守ってやってください〜笑 (2018年8月22日 7時) (レス) id: bba8357d2d (このIDを非表示/違反報告)
乃杏(プロフ) - 夢主ちゃん!大丈夫!私の親は6歳差だから! (2018年8月21日 17時) (レス) id: 477b1e96bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しらせ | 作成日時:2018年8月11日 20時