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その日は何故か空が大泣きだった。傘をさしていても隙間から入る風で、着ていた服には粗方シミのような点が幾つも出来ていた。然し、こんな大雨の中でも行く理由があった。季節はとある夏。大学に進学して暫くした時の話である。
｢大雨なのによく来たな。｣
｢うん、今日は伝えたい事があって。｣
いつも通り出迎えてくれた彼の顔は何処か晴れない。まるで何かを悟るような表情さえ伺えた。並んで雨の降る様を眺めつつ、物思いに耽る。伝えたい事があると言った手前、此方から話し掛けるべきであるのに、今日は何だか降る雨が重苦しいような気がして、一向に声が出なかった。空模様も一段と黒に近かったような気がする。
｢やりたい事が、見つかったの。｣
｢ほう。良かったじゃないか。｣
｢それでね、此処を離れようと思って。｣
｢大学を辞めるのか？｣
｢うん。雨を、研究したくて。｣
｢………雨？｣
｢そう、雨。行く行くは気象予報士になれたらいいななんて思ってる。｣
雨を眺めながら照れくさくなってしまって下を向く。動機は至って単純なものだけれども、それでも初めて持てた夢中になれる本気の夢。彼はそれを聞いて唐突に立ち上がったかと思うと、何処からともなく緑色の何かを取り出した。
｢……そうか。それはめでたいことじゃないか。少し待っていてくれ…ええと、これは新たな道を進むAへ、私からのささやかな門出の品だ。｣
そう言って手渡されたのは先の物体。手に持ってみると漸くその全貌が見えた。それは、まるでサクランボのように赤く、艶のある綺麗な植物だった。彼からのプレゼントは初めてだ。その意図が分からず、暫く通常見る辺りに咲いた花より綺麗なそれに目が釘付けになる。
｢これは？｣
｢ユスラウメと言う。｣
｢ゆすら、うめ…サクランボかと思った。｣
｢実際には食べられるらしい…が、まぁ良かったら枯れるその時まで持っておいてくれ。｣
｢うん、そうする。ありがとうね、ぐるちゃん。｣
そこからは何故か2人とも無言だった。雨の音が徐々に喧しくなっていく。まるで、2人を分かつかのようなその激しい雨音は、どうも私の新しい未来を歓迎していないのではないだろうかという錯覚さえ覚えた。
｢最後にさ、一緒に写真撮っても構わない？｣
｢あ、ああ。私は構わないが。｣
｢じゃあ、撮るね、はいちーず。｣
最後に見た彼の顔がその美しい碧色に似合わず矢張り灰色に曇っていた気がした。
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しをじゃけ(プロフ) - 夢喰いbakさん» 返信遅れまして申し訳ありません...！そう言っていただけるととても嬉しいですし、励みになります！全ての作品に魅力があるのが伝わってとても嬉しいです〜！^^風邪引いちゃいますので服は着てください(笑) (2020年7月18日 2時) (
レス) id: df6ceccb61 (このIDを非表示/違反報告)
夢喰いbak - 素晴らしい企画を発案、実行、投稿して頂き、誠に…まっこっとっに！ (おふざけ)ありがとうございます!!!! 全ての作品に楽曲の素敵さや儚さが詰め込まれていて心にキました…。第二弾！全裸待機していますよ…!!(笑) (2020年7月15日 0時) (レス) id: 582bb38728 (このIDを非表示/違反報告)
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