上から落ちて、下から落ちて (ページ5)

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ThReE ページ5

「ふぅ、いい湯だなー」
大和はリクライニングチェアに座るとパシッと音を立て、ビールの缶を開けた。
「やっぱり、風呂の後はビールだろ」
喉をならしながら、一気に飲み干す。
(そういえば、封筒が届いてたよな...)
「ペーパーナイフ、ペーパーナイフっと...」
よっこいしょ、と立ち上がり、ナギから封筒と一緒に渡されたペーパーナイフを手に取る。
「デカイのから開けますか」
床に座り、大きい封筒を手に取った。
サクサクと紙の切れる音だけが空間を満たす。
「こっちは只の書類か。こっちは...？」
小さい封筒には手書きで宛名が書かれている。
「差出人は...」

『東京都○○ 撫子』

「は？なん、で、アイツから？
ここの住所は教えてないはず...」
と口の中で呟いてから気づく。
(今のご時世、ネットで探せば一発だもんな)
(でもなんで急に手紙なんて)
恐る恐るペーパーナイフを入れる。
サクッ...サクッ...
切り始めると同時に、ピッと音がなりルンバ(武蔵)が動き始めた。
慎重に開けた封筒から紙を取り出す。
「一枚だけ、か」

三つ折りにされた紙を開いて読み始める。

『二階堂大和様

どうも、元気ですか？
まぁ、元気そうですけど。
ずいぶん楽しそうにアイドルやってますね。
何よりです。
まぁ、そんなことより...

貴方のことは片時だって忘れられません。
なぜかって？

貴方のことが憎くて憎くて仕方がないのです。

かつて、貴方がしたことはどんなに消そうとしても消えない...

あいつとおんなじよ。

今(・)を精一杯生きてね。
ただ、それだけを伝えたいと思います。

撫子より』

恐怖がゾワゾワッと背中に走った。
「...くそっ」

もうすでに大和は酔いがさめていた。
頭を振りながら、フラッと立ち上がるとリクライニングチェアに座り込んだ。
武蔵の動く機械音だけが大和の耳にこびりつく。
腕で目元を覆いながら、これから起きてしまうことをただひたすらに考えていた。