上から落ちて、下から落ちて (ページ12)

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NinE ページ12

大和はその後、万里と病院へ向かった。
そこまで深い傷ではなかったが、数針縫い、全治２週間と医師に言われた。
その間、仕事は急を要するもの以外、様子を見て行うことになった。

「すいません！私が気をつけていないばかりに...」
「マネージャーのせいじゃない。俺も注意力が足りなかった」
外では大雨が降り、窓へ打ち付ける雨音がやけに部屋へ響いた。
事務所へ連絡したあと、大和以外の６人は社員が荷物を確認し、危険がないことを確かめてから寮へ帰らせた。
大和と紡は社長室で事実確認を行っていた。
「大和くん、君のせいでもない。これは会社の問題でもあるんだ」
と、そこへ万里が入ってきた。
「社長、他のメンバーの鞄には特に不審なものは入っていませんで。」
「そうか...確か鞄はメンバーカラーだったよね」
「はい」
音晴は腕を組み、考え込んだ。
「これが大和くんを狙った犯行なのか、無差別的に行った犯行なのか...それによって対処の方法が変わる」
「被害届は...」
そう万里が言った瞬間、
「出さなくていいです。」
大和はきっぱりと言いきった。
「今、ここで被害届を出したらそれこそ大事になります。ファンのためにも今回は公には出さないでください」
「でも、また同じことがあったら...」
そう言った紡の言葉は音晴によって遮られた。
「今回の被害者は大和くんだ。大和くんがどうするか決めてほしい。でも」
一呼吸おき続ける。
「今度また、同じことが起こったらどうする？他のメンバーが大和くんと同じ、それ以上のことで傷つくかもしれない。それを考えても、公にはしないかい？」
大和は迷わずこう答える。
「はい。...この傷は俺が料理中に手を滑らせて包丁で切ってしまったと言えば、多くの人が納得すると思います」
「...そうしたら、今回はそういうことにしよう。でも、流石に何度も同じ嘘は言えないって分かるね」
音晴は大和をまっすぐ見つめながら言う。
「はい」
「万里くん、紡。これは全員同じ解釈で徹底して」
二人は頷いた。
「わかりました」
「社長、しばらくの間は警備を少し強化しましょうか」
「そうだね、それはあとで会議をしよう。大和くん、今日は疲れただろう。ゆっくり休んで」
「すいません。失礼します」
大和は深々と礼をすると、部屋を出ていった。

大和が寮へ戻ると、もう深夜１時になっていた。
大和は部屋へ戻るとイスへ倒れこみ、まるで死んだかのように眠ってしまった。
遠くの雷の音が、やけに大きく聞こえた。