第24話 禍野という世界 ページ26
そしていよいよ任務当日となり、Aは以前天馬から貰った白の狩衣を着て、禍野の入口へと降り立った。
今日来るメンバーは、鸕宮家だと、天馬、A、先生、それとあと二人で、他の家も、必ず当主が参加していた。
「おい親父!この前といい、なんで素人ばっか参加してくるんだよ!」
五百蔵家の御息女と思われる少女が、目の前にいる父親に声を張り上げて言う。
「おや、志鶴。彼女は素人じゃあないぞ。呪装だって完璧だ。」
"彼女"というのは、私のことだろうか。
自分の存在が邪魔になっていることを知り、Aは顔には出さずとも少なからずショックを受けた。強くなるとは誓ったけれど、一人の人間として、周りに嫌に思われるのはやはり悲しい。
そんな私の所に天馬さんがすっと近づいてくる。
「あいつらを見返すためにも、全力でいくぞ。A。………ちゃんと守ってやる。」
耳元でそう囁かれ、「はい………!」と力強く頷いた。
名前をちゃんと呼ばれたのも初めてだった。
「では、いくぞ!呪胞用意っ!」
鳴海さんの掛け声によってその場にいる全員が呪力の壁を作る。
そしていよいよ、禍野へとA達は飛び立った。
そこは、ただひたすらに暗く、臭く、邪悪な場所だった。
そして地面に足がついた途端、手で抑えられているような重力と、禍野の隠の気にも蝕まれ、その場から立ち上がることすらできなくなった。
対して、A以外の陰陽師は、何事もなくケガレを祓っていた。
このままでは、力と証明するどころか、何事も出来ずに終わってしまう。
そんなの………、許さない………!自分が………!
「ッ…!……螺鈿ッ…………!」
声帯から絞り上げてきたように出た声と共に、Aの式神である大鷹の螺鈿が現れる。
螺鈿の背中になんとかして乗ったAは、妖刀"濡紅璃"を鞘から抜き出し、朦朧とした意識の中で構える。
そして螺鈿を飛行させ目の前にいた一体の大きいケガレの胴体を、真っ二つに切り裂いた。
普通なら再生されるはずだが、妖刀故の特別な力によって呪詛が、ケガレごと蝕んでいき、一瞬で星へと還っていった。
「やった、たおし……………たっ……?」
周りの陰陽師達が感嘆の声をもらす中で、初めての禍野で呪力を大幅に蝕まれ、呪力が尽きたAは、いよいよ呪装も解け、螺鈿も消えて、空から地面へと一直線に落ちていった。
本人は既に、気も失っていた。
まずい……………!
天馬は既に、駆け出していた。
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あとり - ありがとうございます!大変遅くなりましたが更新させていただきました! (2018年2月13日 0時) (レス) id: ce2f790ea1 (このIDを非表示/違反報告)
(* ´ ▽ ` *) - 続きはまだですか?とても面白いので、更新頑張ってください! (2018年1月28日 15時) (レス) id: 18290c3fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ちっち - あとりさんこの小説大好きなので、頑張って更新してください! (2017年12月29日 9時) (レス) id: d069e4a0a4 (このIDを非表示/違反報告)
あとり - 夜実さん、すみませんでした!ご指摘ありがとうございます!気をつけます! (2017年3月30日 0時) (レス) id: 493c050031 (このIDを非表示/違反報告)
夜実 - 47なのに46になってますよ〜(このコメント消していいです) (2017年3月29日 23時) (レス) id: 180bd39056 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あとり | 作成日時:2017年2月17日 7時