第40話 晴天のように ページ42
天馬やその従者に休むよう諭された後、Aはひとり自室へと向かっていた。
「…………葛城殿。」
自室の襖に手をかけたとき、背後から聞き慣れた声が響く。
後ろを振り返ると、そこに立っていたのはAの修行の相手であり先生である、鸕宮家分家の早雲だった。
「早雲先生…………、どのようなご用件でしょうか……?」
早雲は、Aの元までずかずかと歩いてきたかと思うと急に頭を下げた。
Aは、今まで自分を軽蔑していたはずの人間が突然自分に頭を下げたことに、少なからず驚いていた。
「ど、どうされたのですか……!?早雲先生、や、やめてください……!そんな、私なんかに……」
早雲は頭を下げながら自分の着物の袖を握りしめた。拳に力が入り、血管が浮き出てくる。
「いえ………私は、貴方に感謝せねばならない、そして、謝罪をしなければならないのだ……。」
「今回、貴方を瀕死にまで追い詰め、貴方のおかげで救われた早百合は……私の娘なんだ。」
早雲の口から出た事実に、Aは思わず「ええええっ!?」と叫んだ。
しかし言われてみれば、早百合の切れ長の瞳と赤混じりの黒髪は、先生によく似ていた。
他所者を軽蔑していた姿勢も、血筋からなのかもしれない。
頭を下げたままの早雲の前に跪き、Aは早雲を見上げる。
「早雲先生、謝る事などなにもありません。私は、鸕宮家に仕える者として精一杯の忠義を尽くしただけにございます。どうか頭をお上げください……………………。」
そう言うと、早雲は驚いた表情を見せ、言われるままに頭を上げた。
「…………すまない。今まで君の本質を見ていなかった。失礼を詫びさせてくれ。」
そう言った早雲は、今までの軽蔑していたような表情はなく、ただ相手に敬意を払っていた。
踵を返し帰って行った早雲が一度だけこちらを振り向き、笑顔を見せた。
「君のそういう心に、天馬様は心を寄せられたのだな……………………。」
小さくてなんと言っているかは分からなかったが、Aにはどうでもよかった。
やっと、やっと、認めて貰いたかった人に認めて貰えたからだ。
「やっ……………………たぁ〜〜ッッ!!!」
Aは人目もはばからず、部屋の前で大きなガッツポーズをした。
そして自室に戻り、自分の机に腰掛けると、鏡を見て自分の頭についている桜の髪飾りをそっと撫でた。
おばあちゃん……………私、変われたかな………?
Aは鏡に花のような笑顔を咲かせた。
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あとり - ありがとうございます!大変遅くなりましたが更新させていただきました! (2018年2月13日 0時) (レス) id: ce2f790ea1 (このIDを非表示/違反報告)
(* ´ ▽ ` *) - 続きはまだですか?とても面白いので、更新頑張ってください! (2018年1月28日 15時) (レス) id: 18290c3fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ちっち - あとりさんこの小説大好きなので、頑張って更新してください! (2017年12月29日 9時) (レス) id: d069e4a0a4 (このIDを非表示/違反報告)
あとり - 夜実さん、すみませんでした!ご指摘ありがとうございます!気をつけます! (2017年3月30日 0時) (レス) id: 493c050031 (このIDを非表示/違反報告)
夜実 - 47なのに46になってますよ〜(このコメント消していいです) (2017年3月29日 23時) (レス) id: 180bd39056 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あとり | 作成日時:2017年2月17日 7時