第15話 新しい朝 ページ17
「キツネ子。お前、結局昨日眠れなかっただろ。目ぇクマ出来てんぞ。んん?」
修行の開始前、天馬が不機嫌そうな顔で言った。
「い、いや……気のせいですよ!そっそれより、ふつつか者ですが、改めてどうぞよろしくお願い致します!」
話題を転換するために、Aは隣にいる先生に頭を下げる。
相変わらず軽蔑したような眼差しは変わらなかったが、もう、何を言われたようとも強くなることを決めたのだ。
この人にだって、いつか認めてもらいたい。
天馬はクマができた顔を気にしてはいたが、今までになく本気のAを見て、微笑んだのだった。
「違う!もっと呪力を収束させろ!それではただ放出しているだけだろうが!!」
「はい!!」
今は呪装の修行をしている。"呪力の収束"の意味がさっぱり理解できないAは、初日と同じく先生を明らかにイライラさせていた。
それでも、初日にはまるで無かった気合を見せ、何度失敗しようが、呪装の修行を止めなかった。
それでも、呪力には限界がある。
ぷつっ
糸が切れたような感覚が走ると、呪力が切れて身体中に疲れがどっと押し寄せてきた。
先生は眉を潜め、「続きはまた明日だ。」と言い去っていった。
訓練室にひとり残されたAは、やることがなく、どうしようと考えた。
諸用により、陰陽連本部から帰ってきた天馬が見たのは、訓練室でひとり黙想を捧げているAの姿だった。
後ろから近づいても、まるで気づかない。
まさかだけどこいつ、呪力を練ってるのか………………?
呪力を練るやり方など教えているはずもなく、にわかに信じがたい話だった。
けれど、天馬がAの前にどすん、と腰を降ろすと、ハッと我に返ったAは天馬に向かって頭を下げた。
「て、天馬様……………………お帰りなさいませ。」
「修行、上手くいってねえのか。んん?」
「………はい、"呪力の収束"がまだよく掴めなくて………。」
「呪力の収束ぅ!?俺、そんなんまるで考えてねえぞ。」
「え、えええっ!!!ではどうやって呪装しているのですか………!?」
天馬は腕を組み、うーん、と考え込んでいる。本能で戦うような人なのだろうか。
「……………自分を、自分で包み込むかんじ。………よくわかんねえけど。」
腕を組んだまま天馬はそう続ける。
「でも、感じ方は人それぞれだろ。お前はお前で自分にあったやり方を見つければいい。」
その一言で、Aは、どこか救われた気持ちになった。
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あとり - ありがとうございます!大変遅くなりましたが更新させていただきました! (2018年2月13日 0時) (レス) id: ce2f790ea1 (このIDを非表示/違反報告)
(* ´ ▽ ` *) - 続きはまだですか?とても面白いので、更新頑張ってください! (2018年1月28日 15時) (レス) id: 18290c3fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ちっち - あとりさんこの小説大好きなので、頑張って更新してください! (2017年12月29日 9時) (レス) id: d069e4a0a4 (このIDを非表示/違反報告)
あとり - 夜実さん、すみませんでした!ご指摘ありがとうございます!気をつけます! (2017年3月30日 0時) (レス) id: 493c050031 (このIDを非表示/違反報告)
夜実 - 47なのに46になってますよ〜(このコメント消していいです) (2017年3月29日 23時) (レス) id: 180bd39056 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あとり | 作成日時:2017年2月17日 7時