朝が来ない世界ならば― （７） ページ7
―――果てしなく続く夢の中。
僕らは幸せだけれど、とても寂しいような
風景を眺めていた。
四季が移りゆく風景は
ゆっくりと、けれど
とても早く過ぎ去ってゆく。
どれだけの時間、
花びらが舞っていただろうか。
蝉時雨が聴こえていただろうか。
紅葉が舞っていただろうか。
しんしんと雪が降っていたのだろうか………
日が落ちる前に四季が過ぎてゆく。
ふと考えたのは、
永遠に生きることが出来たなら、
こんな感覚なんだろうと、それだけ。
そう思うほどに、ただ
――――寂しい。
雨打と木綿はどこだろうか。
そう思えば、直ぐ側に温もりがあった。
その表情を見るが、顔は無表情。
話しかけても返事は返ってこない。
―――いつの間にか時が止まっていた。
夢の中。しかも昼だというのに。
降っていた雪は宙に浮き、
不自然に晴れ上がった空は夕暮れを
赤く教えた状態で止まっていた。
―――分からない。
状況が、時が止まる意味が。
そして、雨打と木綿までもが
止まってしまったことが。
すると、動かないままだが、僕の目から
涙が零れ落ちた。
それを見てか雨打の頬を涙が伝うのが
見えた。
―――ああ、そうだ思い出した。
雨打は……もう遠い日の記憶だけれど、
確かに僕の―――
弟だ。
僕と雨打は双子だった。
だから、髪の色も目の色も他人と違うから
って気にすることは無かった。
『だって僕たちは双子だから』
そう思えば１人じゃないんだと思えた。
―――そんなある日。
僕たちの母と父は僕たちを家に置いて
出て行ってしまった。
当時はまだ幼く、理由も分からなかったが、
しばらくして、分かった。
両親にとっては僕たちのこの他人と違う
容姿が気に喰わなかったのだろう。
そう考えてみれば、両親はいつも僕たちを
気味悪がっていた。
―――つまり、あの"懐かしさ"の理由も、
雨打が弟だから。
唯一無二の双子の弟だから。
けれど、思い出したのは僕だけかも
知れない。
現実に戻ってもその返ってこない日々に
嘆き悲しむのは僕１人かも知れない。
――――そう思うと、
時なんて動かなくても良いと、
その方が弟と共に失った日々を
取り戻せると、そう願ってしまった。
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作者名：雨音 時雨 | 作成日時：2021年2月26日 0時
