朝が来ない世界ならば― (48) ページ48
―――ある程度…それがどこまでの範囲なのかは
本人しか知り得ない。
だが、木綿が言う通りに元の世界でも
満月の夜だけ暴走していたなら翌日に
雨下に会いに行くなんてことは
体力的にも精神的にも無理がある。
きっと、満月の日でも暴走までは
いかなかった筈だ。
しかし、その程度を軽く超える程に
この世界では月の力が強いと言う事だろう。
ただ、雨葱は早く月明かりの当たらない
場所へ移動させなければ。
「さあ、基地へ戻ろうか」
木綿が失神している雨葱を背負って
皆に戻るように促した。
僕も何か協力したかったが、
役に立ちそうな能力じゃない為、
見守るだけにした。
雨下や雨打、喜雨もそんな感じだ。
しかし多雨はそっぽを向いており、
所縁は他人事のような顔をしている。
この団体は上手くやっていけるのだろうか…
どうしても心配になってしまう。
月明かりの漏れていたあの場所からは
かなり離れ、段々と暗さが増していった。
そして、歩きながら雨下が皆に言った。
「あの…仲間が増えたのは良いんですけど、
あの木の中は全員は入れませんよ…?」
ん?
いち、に、さん、し…
あ、8人か…確かに入れないな。
「基地とやらを拡張するんですか?」
喜雨が提案した。
仲間になったばかりでそう言ってくれるのは
良い事だと思うし、やはりそうする以外に
方法は無いのだろう。
「ええ、そうしましょうか。
他にも手伝って下さる人はいますか?」
「もちろん」
「人手が足りないならば」
僕は当たり前ながら、賛同したのだが、
所縁が珍しい事に少し照れながらも
協力してくれるようだった。
僕はついついあからさまに所縁に向けて
ニヤニヤした。
当然、それを見た所縁は…
「う、煩いな。
何だ、その顔は…っ!」
「いや、別に何も?」
「その顔で何も無い訳がな―――」
いつもの平常心が崩れ、
照れと怒りが混じった様な表情をした。
出会ってから初めて見たかも知れない。
こんなに感情を剥き出しにするなんて。
もちろん、良い意味でそう思えた。
―――なんとか基地へ辿り着いた僕らは
それぞれに作業を始める。
行きよりも帰りの方が、
雨葱を運んでいた事もあり、
時間がかかった。
そして、木綿は皆に言う。
「―――団体名を正式に決定するよ」
朝が来ない世界ならば― (49)→←朝が来ない世界ならば― (47)
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雨音 時雨 | 作成日時:2021年2月26日 0時