朝が来ない世界ならば― (44) ページ44
雨葱はとても不器用な人で無愛想に
見えるけれど、とても情に溢れた人です。
とても優しいし、何か悪いことをしたら
叱ってくれます。
ただ1つ、問題があるとしたら、
彼女は獣と人間のクウォーターだという事。
別に獣と人間のクウォーターだからと言って
悪い訳じゃありません。
でも、やっぱりフクロウさんが感じたと言う
獣っぽい雰囲気は普通の人には
分かりませんが、この皆さんのような
方々なら分かるかも知れませんね。
情報提供くらいはしないといけませんし…
参加させて頂きましょうか。
「そのお話、私にもお役に立てる事が
ありそうです」
私はそう言って席に座った。
皆私を受け入れて快く参加させて貰えた。
「心当たりでもあるってことかな?」
時雨さんが優しく訊いてきた。
「はい、何せ私はここに
4年間住んでますからね」
「ああ、そうだったな」
お兄ちゃんが呟いた。
それから私は簡単に説明をした。
「―――で、その子の名前は雨天雨葱って
いいます。
私との面識はあるので会いに行って
仲間にするのは問題無いでしょう」
「ああ、獣とのクウォーターならば
戦闘能力には長けている筈だな。
私たちだけでやっていけるのか、
少し疑問に思っていたのだが、
これで大丈夫だろうね」
所縁さんが付け足して言ってくれた。
すると、お兄ちゃんも言った。
「うん……確かによく考えてみれば
僕たちは感知出来るようなタイプばかり
で攻撃力のある人は居なかったね」
それに対して雨打さんが首を傾げて言った。
「攻撃力って……戦う必要とかあるの…?」
「戦うかは分からないが、
私はこの世界が変わってしまうという
事件については裏に何か大きな力が
働いていると思っている。
まあ、推測だがな」
所縁さんが答えた。
"何か大きな力"……か。
確かに世界が変わるなんて大規模なこと、
何かメリットがある人物の
力が働いているとしか考えようがない。
「となると……何かの陰謀が隠れている
って事ですね」
「ま、そういう事さ」
私の問いに所縁は軽く答えた。
そう言えば、所縁さんって事の重大さを
1番知ってるようで、どうでも良さそう。
やっぱりそこは運命に身を任せてるのかな。
―――そして私たちは
雨葱を探す準備を始める。
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作者名:雨音 時雨 | 作成日時:2021年2月26日 0時