朝が来ない世界ならば― （42） ページ42
緋……？
と言う事は―――
「まあ、ここまで言ってしまえば
分かってるだろう。
"蒼"なら良い知らせだが、
"緋"ならば何か悪い事が起きる前触れさ」
「やっぱりか…」
木綿が呟いた。
そして、所縁が僕と雨打を
真っ直ぐ見つめて言葉を放った。
「今は良いが、私から見るに
君たち２人の運命は、非常に不安定だ。
君たちの過去についても知っている。
運命…いや、"さだめ"と言うものは
決まり事のようで実に気まぐれだ。
君たちの場合は特に
気をつけた方が良いでしょう」
僕らを見つめるその目は、
何か遠いものを見るような、
予言者のような目だった。
「「…はい」」
そのせいで一瞬、僕も雨打も戸惑ったが、
返事をした。
それでも、所縁がとても近い存在とは
感じる事が出来なくなってしまい、
返事は敬語になっていた。
―――沈黙の中、
雨下が朝食を作り終えたらしく、
皿を持ってテーブルまで来た。
その暗い雰囲気に気が付いた雨下は
どうにか雰囲気を和ませようと
笑顔で朝食を配っていた。
「皆さん、お話は終わりましたか？」
笑顔を変えずに雨下が話し掛けて来た。
それに答えたのは…
「ああ、理解はして貰えたようだ」
所縁だった。
しかし、木綿は何か考え込んでいるようだ。
顎に手を当てて独り言を言っている。
「―――ということは……が……で……っ！
なるほどっ！」
「うわぁっ！？」
突然叫んだ木綿に驚いて雨下が飛び退いた。
「な、なるほどって…？」
驚きながらも雨打がいつもののんびりさで
訊ねる。
「ああ！皆聞いてくれるか？
そして所縁ありがとうっ！」
おいおい、木綿どうしたんだ……？
キャラが変わってるぞ？
いつもの真面目さは何処行った。
僕がそんな突っ込みを心の中で
繰り出している間にも木綿は興奮気味に
話し出した。
「時雨の未来予知能力で、
所縁の運命を見る能力……
まあ、運命自体は言いたくないのか？
しかし、その相手の位置の把握は可能。
そして、所縁が作ったサイコロだ。
今は時雨と雨打の手元にあるな。
２人はそれを肌身離さず持ち歩くんだ！」
「「う、うん？」」
なんだか話が終わらなさそうだぞ…
それにしても、所縁は器用な上に
元々の能力を応用出来るのか…
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作者名：雨音 時雨 | 作成日時：2021年2月26日 0時
