朝が来ない世界ならば― （41） ページ41
「―――もう起きていたんですね」
雨下が目を擦りながら歩いて来ていた。
木綿と所縁は少し寝ぼけ瞳で
木から降りているところだった。
「あ…雨下、おはよう」
そう雨下に声を掛けたのは……雨打だった。
珍しい事もあるもんだな…
確かに最近は雨下には心を許している
ようだったけれど…
「ええ、雨打さん、時雨さん
おはようございます」
「うん、おはよー」
にしても、雨下の敬語は
どれだけ親しくなっても変わらないな。
「君たちは早いな、こんな朝っぱらから」
「木綿、ここまで暗いのによく朝っぱらだ
なんて言えるな」
木綿と所縁が軽い茶番をしながら来ていた。
「木綿、所縁、おはよー
遅かったね」
「「いや、君たちが早いだけだ」」
まさかこの２人がハモるなんてね…想像外だ。
―――僕は雨打と一緒にサイコロが
光り始めた事について軽く説明をして、
僕たち５人は木の椅子に座った。
「あ、少し抜けます、
朝食を作ってきますので」
雨下がそう言って木の中に入っていった。
大木の幹はとても太い。
だから昨日のうちにそこの中を削って
入れるようにしておいたのだ。
そこは５、６人くらいなら過ごせる広さで、
台所も用意してある。
水は川から汲む必要があるが、
火に関してはマッチで直ぐにつけられる
ようになっている。
「なら僕も―――」
「ダメ、お兄ちゃんはリーダーなんだから」
木綿は雨下に止められてしまった。
こう妹に止められてしまえば、
木綿も無理に着いていこうとはしなかった。
「―――それで、
そのサイコロのストラップだけど、
所縁、君が作ったんだろう？」
木綿が所縁に問い詰めるように訊ねた。
「ああ、そうだ。
実のところ、そのサイコロの元は
私の持つ２つの見えないサイコロでね」
ああ……なるほど？
「君たちに渡したこれは、
君たちの気持ち次第で色が変わるのさ。
今は"蒼"だね？
つまり、君たちの運命は今、悪くないよ。
なんなら良い方向に進んでる」
「そっか、良かった……
っていうか、そういうことは
早く教えてよ」
僕と雨打は安心して、肩の力を抜いた。
「ああ、悪かった。済まないな」
「ところで…"蒼"があるなら―――」
木綿が言いかけたところで所縁が言った。
「ああそうだ、"緋"もある」
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作者名：雨音 時雨 | 作成日時：2021年2月26日 0時
