朝が来ない世界ならば― （35） ページ35
「―――でも、それだけで同じだとは…」
「言えるのさ」
所縁は僕の声を遮る様にきっぱりと言った。
「世界が変わる前から確かに
運命を見る事が可能だった」
「なら、月を見たところで――」
「でも、能力が宿ったのさ。
何だか知っている様な顔をしているね」
所縁が言うように、
僕は少し心当たりがあった。その事例に。
雨打が元から動物と
意思疎通する事ができた。
しかし、月を見てその瞳に力を宿した。
そう、動物と意思疎通する能力が
動物と話す能力になったのだ。
「雨打君…だったかな？
過去の事だから話すけど、
彼の運命を見たらね、
持っていた能力が更に違う形として
使える様になるって出たのさ」
「つまり…？」
「つまり、私の運命を見通す能力は
その運命を持つ相手の居場所が
分かるようになったのだ」
居場所が分かる？
ああっ！そういうことか！
「だから僕らの場所が分かったんですね！
それにしても…僕は未来を予知する能力
だから、似ていますね」
僕がそう言うと、所縁は小さく左右に
首を振って言った。
「似てないさ。
あと、敬語は堅苦しい。
たとえ元からの能力でなくとも、
君には及ばない。
君の未来予知は的確だ。
しかし、私の能力は限りがある。
どこのどんな人なのか、
少しでも情報が無ければ使えない」
「そうなんだ…」
しばらく話しているうちに、
雨打、木綿、雨下の３人が僕を探していた
らしく、後ろから向かって来ていた。
木綿が僕に向かって何か叫んでいる。
「時雨！心配したじゃないかっ！
勝手に離れるなんて！」
「あはは…ごめんって…」
「時雨、仲間たちか？」
所縁が僕たちの会話に割り込んで来た。
「ん……？」
木綿が顔を顰めて所縁の顔を覗き込む。
ああ…そっか、初対面だった…
「貴方はどちら様で？」
木綿が丁寧な口調で所縁に訊ねた。
「私は樹雨所縁だ。
"運命を司る者"…いや、君たちの
仲間に入れて欲しい」
「へぇ…仲間ねぇ」
なんか…木綿が威嚇してるんだけど…
「木綿、所縁は僕が予知した人だよ。
"運命を見通す能力"を元から持ってる。
雨打と同じケースの子だよ」
僕がそう説明すると、木綿は安心した様な
顔で所縁を仲間として快く迎え入れた。
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作者名：雨音 時雨 | 作成日時：2021年2月26日 0時
