朝が来ない世界ならば― (30) ページ30
皆、真剣な表情で頷き合った。
その沈黙の中で木綿が指示を出した。
「一度、この森を出よう。
地図くらいなら学校にあるだろうから
手分けして探すんだ」
もう既に木綿がリーダーである事が
暗黙の了解となっている。
「了解した」
「…分かったよ」
「では向かいましょうか」
3人の声が重なり、深い森に響き渡った。
だいぶ時間が掛かったけれど、
とりあえずは学校まで戻って来られた。
それにしても、橋が壊れているだけで
こんなにも大変だなんて…
あの場所を渡る時に雨下が
『本当はこちらから会いに行くつもり
だったので、修復する必要は無いと
思っていたんですけどね…』
と呟いていたのを思い出した。
多分、あの大木の場所が本拠地になるだろう
から橋の修復が必要だってこと…だよね。
「この街の地図がありそうな所って
言ったら、社会科の教師の机……かな」
「なら、職員室に行く?」
「まあ…そうなるね」
時雨は職員室の方を指して
ニヤッとした。
その表情は幼い頃一緒に悪戯した時の
表情と全く同じだった。
懐かしいなぁ…
あの頃は地面に落描きしたり、
摘み食いしてみたりしてたなぁ…
そんなことを考えている間に
職員室に着いた。
バタンッ
「「失礼しまーす…」」
時雨と僕の声が重なり職員室内に響く。
すると、木綿が僕らに苦笑いをした。
「いや…あのさ、人が居ないんだから
そういうの要らないだろう?」
「「え?だって、そんなこと言ってたら
会話する事を忘れそうじゃん」」
「ハモるなよ」
木綿は雨下と違って情がない。
だから、こういうところでは
人と違う言動とってしまったり、
周囲の人が引いてしまったりする。
けれど、そういうところを除けば
決して悪い人では無いから
人には好かれているんだ。
「まぁまぁ…ほら、あそこじゃないですか?
社会科の先生の机は」
雨下が僕たちの今にも揉めそうだった
雰囲気を和ませようと木綿をなだめた。
「ああ、よく分かったね。
確かにその机だよ」
その机に目をやると確かに
机に立て掛ける様に大きい紙を
丸めた様なものが置かれていた。
開くと、この街の地図だった。
「まあ…大き過ぎる様に感じるけど…
外で使うなら丁度良いね」
「―――さあ、僕らの秘密基地に戻ろうか」
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作者名:雨音 時雨 | 作成日時:2021年2月26日 0時