朝が来ない世界ならば― （26） ページ26
「場所が分かったよ」
僕がそう答えると、
木綿は安堵の溜め息を着いた。
「……で、場所は何処だったんだい？」
「やっぱり路地裏だけど、近くに
『三つ葉公園』が見えた。」
それを聞いて木綿は記憶の中から
『三つ葉公園』を探し出そうとして
いる様だった。
しばらくして、木綿はハッとした表情をし、
口を開いた。
「………その公園に心当たりがあるよ」
「やっぱり木綿は物知りだね」
「そんなことないさ。
あの公園は幼い頃に両親と雨下と僕の
４人で最後に遊んだ場所なのさ。
両親の仕事が忙しくてなかなか
家族で出かけられなかったからね」
「そっか…」
「『三つ葉公園』は確か……いや、
地図でも無いと説明し難いな」
「なら後で皆にも説明しよっか」
木綿は申し訳無さそうに頷いた。
それからまた、特訓を始めた。
僕はさっきので見たい未来を見れるように
なったこと、１回能力を使った時の
体力の消費量が他の能力と比べて
５倍近くになることから休憩することに
なった。
その間、木綿に心を一方的に読まれ続ける
ことになるのだけれど…
「……あのさ、君って疲れたとか怠いとか
しか考えてないよね」
木綿が呆れた様な目で見下ろして来る。
「……それで、どうなんだよ」
「読むスピードが上がったかな。
体力もあまり消費せずに済んでる」
「じゃあ、そろそろ戻りますか」
僕はそう言って立ち上がった。
「まあ、さっきの件についても
話し合う必要があるからね」
木綿も戻る様だ。
そして、暗い森の方を向き、
２人並んで戻る時、
ふと、右手に温もりが触れた。
右手を見ると木綿の左手が
不自然に繋がれていた。
僕はそれを自然に繋ぐ様にし、
木綿に笑いかけた。
だって過去を認め合ったのだから、
友人で良いんだよ。
友達なら手を繋いだっておかしく無いよ。
けれど……なぜか隣に居る木綿は
頬を赤らめていた。
―――２人は雨打と雨下の所へ
ゆっくりと進んで行った。
鬱蒼とした森の暗がりは繋いだ手を離せば、
直ぐに迷子になってしまいそうだ。
だから、互いに強く固く手を繋いだ。
―――二度と妹や弟たちの時と同じように
手を離さぬように。
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作者名：雨音 時雨 | 作成日時：2021年2月26日 0時
