朝が来ない世界ならば― （24） ページ24
「―――双子の弟でさ、ずっと仲良く
暮らしていた……はずだった。
元々、僕たち双子はこんな容姿で……
周りの大人からは気味悪がられていた。
けどね、両親だけは信じて居たんだ。
だから……ある時見捨てられて、酷く
傷付いた」
僕は溢れそうになる涙を堪えて、
沈む様な声で言った。
木綿はそれでも尚、笑顔を崩さないように
ゆっくりと相槌を打ってくれていた。
「それで、行く宛の無い僕たちを親戚が
それぞれに引き取ってくれたんだ。
その瞬間は救われた様で嬉しかった。
でも、弟とは離れ離れに
なってしまった。
その後も引き取ってくれた親戚たちは
僕らを疎ましく思っていた様で……
結局、二人とも今は一人暮らしに
なってしまったんだ………
まあ……今はもう一度出逢えたんだけどね」
一通り話し終わったところで木綿が
笑顔を少し哀しげに崩して言った。
「それで……今はハッピーエンドなのかい？」
「えっ……？」
そんなことを訊かれるなんて…
思いもしなかった。
僕は少し考えて……
満天の星空を見上げて答えた。
「……"幸せ"では無い。
―――まだ、"終わり"でも無いよ」
すると、木綿はその返事を分かっていたかの
様な笑いを浮かべた。
「ああ、そうだろうね。
そうじゃなきゃ困るよ」
木綿はそう言って僕の方を見た。
………でも、何だか違和感がある。
なんで『そうじゃなきゃ困る』んだろ？
そんなことを考えていると、
こちらを見ていた木綿が不意に笑った。
「木綿……どうしたの？」
「ふふっ……いや、ただ君の考えていること
に対してあまりにも感が鈍いなぁ……と
思って………」
「え？それ、どういう意味？」
「僕、雨打が君と生き別れた弟だと
知ってたよ。夢を見た辺りから(笑)」
「―――――っっっ！！」
知ってたなら言えよ！！！
まあ…それが木綿らしいけどさぁ……
「ってことは、夢の中でも人の心が
読めちゃうんだな」
「まあね……あ、『そうじゃなきゃ困る』
って言うのは、僕の様に
諦めないでいてほしいって意味さ」
悪戯っぽく笑っていた木綿が、
最後のところでだけ
真剣に真っ直ぐ僕を見ていた。
たった一度、雨下を諦めた過去の自分が
許せないのか。
だから、今は前以上に雨下を大切に――。
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作者名：雨音 時雨 | 作成日時：2021年2月26日 0時
