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朝が来ない世界ならば― (3) ページ3

"優等生"って言葉……嫌いじゃないけど

 好きにもなれないな。



 僕は、木戸木綿。年齢…?14だよ。

 友達は変わり者。

 だけど、それが少し羨ましいと思うよ。

 僕はいわゆる"優等生"ってやつだ。

 周りが言うと……ね。

 でも、僕はそれが嫌だ。

 "優等生"ってだけで特別扱いされるんだ。

 変わり者で有名な雨打は

 ほっとかれる様な特別扱い。

 だけど、僕は話しかけられてばかり。

 静かに読書すら出来ない。



 ――けれど、今。

 ただ、いつも通りに雨打と話していた時だ。

 「―――木綿はちゃんと聞いてくれるよ」

 「はぁっ!?そりゃあ、聞くけど……」

 その時、雨打と雨打の肩に跳び乗った猫が

 いつもの様に意思の疎通をしようと

 していた―――はず、だった。

 その瞬間にあんなに鈍感な雨打でも

 感じてしまうほどの空気の揺れを感じた。

 そして、世界は漆黒へ。

 隣で突っ立ってる雨打は空に浮かぶ満月を

 眺め、透き通るように赤い右目から

 真っ赤な涙を流していた。

 どうやら雨打は"動物と話す力"を

 右目に宿したらしく、僕には

 「にゃあにゃあ」と鳴いている様にしか

 聞こえない猫の言葉に驚いている。

 そんなことを考えていた僕は興味本意で

 上空の満月を眺めていた。

 「綺麗だね」

 「う、うん」

 突然かけられた言葉に驚いたのだろう。

 雨打は右目の真っ赤な血の涙を拭いながら

 答えた。

 「さっき……猫さんが『僕の目に力が

  宿った』って言ってた

 (もっと他の動物さんとも話せるってこと…

  なのかなぁ……)」

 「そっか…………え?」

 はっきり聞こえた。

 けど、口が動いていなかった。

 まさか……心の声なのか?

 僕にもし、そんな力が宿ったなら

 確実にこの右目が――――。

 あぁ…本当なのか。

 右目の縁を触ると濡れた感触がした。

 その濡れた指を自分で見ると真っ赤な…

 そう。雨打と同じ血の涙だった。

 これで解った。

 僕の右目に宿った力は"心の声を聞く力"だ。

 これでもう、ただの"優等生"ではない。

 完全な"変わり者"だ。

 見た目も元から普通じゃないし、

 変わり者と言われる雨打と同じ様な

 能力も手に入れたのだから。



 僕はこの右目に

 "優等生を辞める"ことを誓った―――。

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作者名:雨音 時雨 | 作成日時:2021年2月26日 0時

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