朝が来ない世界ならば― （16） ページ16
―――今、左目に見えたのは……新聞か。
左のその瞳に見えたのは手元にあるものと
全く同じ新聞。
そして、その新聞が時間が経つ毎に
そう、定期的に日付が進んでいっていた。
―――この考えはおおよそ当たりだろう。
よく考えてみれば、そうだ。
"時が止まっている"ということは
現実での時間の感覚が分からない。
つまり、元の世界でも
"時が止まっている"とは限らないのだ。
そして、この新聞があるということは、
やはり、元の世界では
"時が止まっていない"ということだろう。
すると、僕が呟いた言葉を聞いて
しばらく固まって状況把握をしていた
木綿が口を開いた。
「と、いうことは……毎日、この新聞が
"日めくりカレンダー"の様な
役割をしてくれると？」
「ま、あくまで僕の考えだけど……多分ね」
ふと、木綿の隣に居た雨打を見ると――
未だに固まっていた。
僕は雨打の方をを軽く叩きながら言った。
「おーい、大丈夫？生きてますかぁー？」
「………」
返事が無い。
本当に大丈夫だろうか…
「おーい？おーいってば！」
「……？………――っ！……あ」
あ、やっと動いた。
そうなんだよね。
雨打って元からマイペースだから
この難しい状況を一生懸命に把握しようと
したらこれくらい時間がかかるんだよね…
しかも、雨打って何か１つやり始めると
のめり込んで集中力が上がるタイプ
だからね。
「………つまり、毎日更新される新聞？」
あ……ああ…………これは。
ここまで集中して時間かけてフルで
考えたはずなのに、この結果……
結局、僕が呟いたことと同じじゃん……
なんか……泣けてくる。
「ま、まあ……そういうことさ！」
木綿も雨打の性格を把握しているから
だろう。
これでも頑張って出した結果だと思い、
精一杯フォローしているようだ。
―――うん。雨打、良い友人を作れたんだね。
なんだか、安心した。
「まあ、つまりはこの新聞さえ持って
いれば、その日の日付が分かるのか。
となると、今日は丁度………４月１―――」
木綿が１日と言おうとした丁度その瞬間に
新聞の印刷が切り替わった。
日付は４月２日になっている。
「あ………ま、こういう事だね」
―――そして僕らは新たな手掛かりと共に
進んで行くのだった。
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作者名：雨音 時雨 | 作成日時：2021年2月26日 0時
