陰を知らぬ世界―。 (ページ15)

今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:1,122 hit

朝が来ない世界ならば―　（15）ページ15

「この日時……前に見たことがある…」

　時雨が真剣な表情で新聞を見たまま言った。

　確かにこれは……この日付は…

　左目に力が宿った時に見た真っ赤な景色の

　中で見た新聞のものと全く同じだ。

　手元の新聞の端にある『2021/4.1.』

　記憶の片隅にしっかりと残っている

　あの時見た新聞の端にある『2021/4.1.』

　―――きっとこれは、あの時見た未来だ。

　やっぱり、この力は"未来予知能力"…

　「え……時雨、どこで見た日時なの？」

　雨打が訊いてきた。

　何かの手掛かりになると思ったのだろう。

　だから、ちゃんとこの力について

　教えることにした。

　「いや…この日付、左目を覚醒した時に

　見たんだよ。多分、それを見たときから

　の未来風景……つまり、今のこの現状を

　あの時、見たってこと」

　「………なぁんだ。でも、これではっきり

　したね。その左目の能力。」

　なんて話していると、やっと安全ルートを

　見つけて来た木綿が見えた。

　ん…？何か叫んでる？

　耳を澄ましてみようか……

　「何か手掛かりでも掴んだのかぁーい！？」

　やれやれ、木綿も勘違いしているようだ。

　こちらからも叫べば聞こえるだろうか…

　「違うー！僕の左目の力がはっきり

　分かったから確信を持てるなぁーって

　思っただけー！」

　なんて叫んでる間に木綿が辿り着いた。

　「ぜぇぜぇ……ゲッホゲッホ…あ"ぁーもう

　そんなことならはや、く言って…

　くれ、れば良かったぁ……のにぃ……」

　なんて体力が無いのだろうか。

　思わずそう考えてしまう程に、

　息切れしている。

　―――とりあえず、向こう岸まで安全に

　移動して、木綿に川の水を飲ませた。

　やっと落ち着いた木綿はまた口を開いた。

　「それで、君の左目の力は何だい？」

　「………"未来予知能力"」

　…ゴクリ

　息を呑んだ。

　「そっか…うん、凄いや。このメンバー

　の中で１番役に立ちそうだね。

　で、その根拠となったこの新聞の日付

　だけど……これは何の日付だと

　考えられる？」

　すると、突然雨打が目を輝かせて言った。

　「…エイプリルフール！」

　当然ながら、木綿は冷めた目で答えた。

　「ああ……なんでそうなるんだよっ！？」

　「この新聞…もしかしたら毎日更新される

　のかも知れない…」

　僕はポツリと呟いた。

　―――今、左目に見えたのは……新聞か。