陰を知らぬ世界―。 (ページ12)

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朝が来ない世界ならば―　（12）ページ12

―――気分は快晴。

　晴れ渡る様な気持ちでとても清々しいのに

　外は暗い。

　夢の中では確かに昼だったというのに

　動かない時の中で目覚めると

　本当に寝たのかも心配になる。

　―――ただ、あの夢の中で１つ発見があった。

　それは僕だけの発見かも知れない。

　雨打はやっぱり気付いていないのかも

　知れない。

　はっきりと覚えている夢の中の風景は

　最後、僕と雨打がただ泣いていた。

　生き別れたはずの双子だったのだ。

　それに僕は気がついた。

　こんなにも近くに居たというのに、

　あんなにも仲良く暮らしていたと

　いうのに…何故忘れていたのだろうか。

　雨打は弟。

　生き別れた理由は、両親が家を

　出て行ったこと。

　両親が出て行った後、僕たち２人は

　双子だというのにそれぞれ離れて

　暮らしていた。

　僕は近所の伯母の家で、弟は少し離れた

　ところの叔父の家で暮らしていた。

　とはいえ、僕は平気で校則違反を

　しているので、当然ながら伯母の

　言うことは全く聞かない。

　だから、一人暮らしをしている。

　確か校内の噂では、雨打も一人暮らしを

　強いられているんだったかな。

　やっぱり叔父にも変わり者扱いを

　されていたとか聞いたことがある。

　でもまあ、今はこの世界からの脱出方法を

　捜さなければいけない。

　……けど、やる気にならない。

　ただ―――、雨打と失った日々を

　この止まった世界の中で取り戻せるのなら

　取り戻したい。

　そう願ってしまったから。

　脱出方法を見つけてしまえば、

　雨打と失った分の時間を取り戻すことなく

　正常な時の流れに戻ることになる。

　そう考えると、運命に抗いたい気持ちに

　なってくる。

　―――雨打は知らないかも知れない。

　だから、ただそれの為だけに僕は

　共に脱出方法を捜すことにしよう。

　僕は雨打の寝顔を眺めるのをやめて

　精一杯、夢の中でのことが無かった振り

　をする。

　「――――雨打、おはよう。外はまだ暗いや」

　そう言って僕は精一杯、笑った。

　「時雨……おはよう………うん、暗いね…」

　「………時雨…おはようございます」

　不自然だったかも知れない。

　いや、それでも良いんだ。

　何となく、木綿は全てを知っているかの

　様な視線をしていたが、それでも良い。

　―――これから、今までを取り戻すんだ。