朝が来ない世界ならば― （１） ページ1
―解っていても、少年少女は願ってしまう。
朝が来ないことを―。
「……あぁっ！！」
…バサッ
とある少女が布団を吹っ飛ばす。
僕は雨音時雨。１４歳だ。
特徴的だと言えることは髪が白いこと。
僕っ娘であること。
そして、世の中では珍しいとされる
オッドアイであることだ。
僕は右目が青く、左目が赤い。
ところで今、布団をわざわざ吹っ飛ばした
意味が理解るだろうか…
理由は単純……遅刻だ…
早く学校へ行かなければ。
「……ん？あれぇ…？」
校門に入った途端、時空が歪んだかの様な
亀裂が自分の足元に広がった。
状況把握が追いつく前に気付けばそこへ
落ちていた。
「あぁーれえぇぇぇっーーーーー！？」
「ん……あ……？ここ…どこ…？？？」
真っ昼間だったはずの自分のいた世界とは
違う……どこか遠い世界へ来てしまったの
だろうか……
どこからどう見てもここは夜だ。
しかも、日没直後かぁー。
しばらくは日が昇らないなぁ。
「あ、もうすぐで月が登ってくる」
と、言っている間に月が登り切った。
まんまるの満月だ…うさぎも餅つきしてる…
僕はただ眺めているだけのつもりだった。
けれど、なぜかそれを眺めているうちに
顔というか身体というか……なんだか
熱を帯びている気がする。
無意識に目に力を入れた。
目がぼやけてしょうがないからだろう。
僕は少々視力が悪いのだ。
「………？」
ここはどこだ？僕はさっきまで夜の世界に…
「ぐわぁッ………！？！？」
目が……目がぁっ…！
……熱い…痛いなんで……？流石におかしい…
スマホの自撮り機能で確かめた。
すると、左目の赤色が濃さと光を増し、
尋常ではない程の高熱の血の涙を流して
いた。理由が…分からない。
ただ１つ分かったことは―。
"最後に見た風景は未来の出来事であること"
だけだ。
根拠は、真っ赤な血の涙で滲む赤い視界の
中で妙に目立っていた新聞の端に、
『2021/4.1』
と、記されていたことだけ。
更に、僕はたった今やっと理解した。
あの満月を見た時から
自分の左目にとある超能力を宿したと
いうことを……
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作者名：雨音 時雨 | 作成日時：2021年2月26日 0時
