ツインテールの日 ページ9
(せんせい、もしかしてやきもちしてくれてるんですか)
いや、分かってるんだけどと1人ぼそぼそしゃべる辻田に星川は思わず声を出して笑いそうになるのをこらえ肩を震わせた。
「源馬…」
空豆が手を伸ばした源馬を起こそうとするもその手を払いのけた。
「ツインテなら誰でも良い、そんなのわかりきったことじゃあねえのか」
「…源馬、待て」
(君だから興味を持ったんだ)
かつての源馬の声が空豆の頭の中でリピートされる。
「源馬、俺、あのな…」
「ここから退いた方がいいんじゃない。そこのお二方からすれば僕らは邪魔者だろうしね」
「げ、げんま！」
「やめてやだその言い方。先生ももう職員室帰る」
「せんせ？！」
「その髪型やめろ、先生ツインテには興味ないからね。でも他の男子生徒はそうじゃないみたいじゃん。だからやめて。じゃあまた後で」
煙草を片手に屋上へと上がる。
「あ、せんせ！こうないは きんえんですよっ」
ひよが慌てて後ろを追いかける、が、大人気なく拗ねる辻田はひよを振り払い屋上へと消えていった。
落ち込むかと思われたひよはそうじゃない。
締まりのない笑顔で若干頬を染めながらため息を吐いた。
「せんせいが、ひよにやきもちを…」
「…よ、良かったね」
空豆は顔をひきつらせる。その隣で源馬は興味なさ気に携帯をいじっていた。
「源馬、ごめんね」
「何がだい」
「言葉、今思い出したよ」
「何の話か分からないんだけど」
「…分からなくていいよ」
空豆は目を細め源馬の髪を撫で回した。
それが嫌なのか源馬はまた手首を掴みその行為を止めさせた。
「分かったから髪を触るのはよしてくれないかな」
「ちょっとぐらいいいだろ」
他愛もない話をしながら源馬は1人の世界に入った星川の襟首を掴み、教室へと戻る。
「なあ、源馬」
「…ん？」
「リアルツインテは俺だけでいいよ」
「…？どういう意味だい。話が全く見えないんだが」
「…この鈍感。知らねえよ、教えてやんない」
空豆は星川のうっとりした顔を見ながら微笑んだ。
「何となくわかってきたよ、星川君。君と俺は案外似てるのかもしれねぇな」
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作者名：塩味 | 作成日時：2019年1月27日 19時
