同じ月を見てた ページ49
その中に、カイもいた。
「アレクシス…何を」
「カイ！そいつを殺すのだ！お前を裏切り今父を殺そうとしているそいつを！」
「アレクシス、何をやっている！オマエは正気か？！何しに来た？！答えろ…！」
カイは完全に思考力を奪われ鉄球を握る手は震えている。
「…俺の夢を叶えに来た」
カイの瞳に写るアレクシスはひどく柔らかく優しい表情だった。
「引っ込んでろ！！カイ！！」
支部長の合図と共に組織内の人間はアレクシスへと一斉に発砲する。
素早く反応したアレクシスは机の中へと身を潜め代わりに支部長をぶん投げた。
すると発砲された弾は全て支部長の体へと食い込み床へと叩きつけられる。
「無茶だ、アレク！！もうやめろ！オレのことはもういい！！」
それに戦力を削がれた組織の人間から物陰から確実にアレクシスは弾を放つ。
しかしきりがない。
「いや、こいつは俺の夢だ。その夢のためならなんだってするぜ俺はよオオ！！！
…俺はいつだって、お前のためだけに戦ってきたぜ。
だからここで引き下がるわけにはいかねえ！
オラァァ死ねやアアア！！！」
アレクシスは正面から組織の人間たちへと飛び込み早撃ちをした。
仲間が絶命すると同時にアレクシスもその場で倒れた。
「アレクシス！」
カイは駆け寄りアレクシスの頭を膝の上に乗せる。
「引っ込んでろっつっただろ…」
既に息は細い。
「アレクシス……オマエ、…」
「…何だい支部長……」
「うるさい、裏切り者……」
カイの目から涙が溢れ始める。
「オレたちの夢だ……だから、オマエがいないと……この夢は意味ない」
「…居るよ俺はここに。ずっとお前の側にいるぜ」
「……支部長なんか、ならなくていい、いらない……いらない、オレはただ、……オマエとずっとずっと……」
カイの頬に大きな手が添えられ優しく撫で回される。
「いざこうなった時……、やっぱり嫌だなア…後悔しかねえよ…」
カイは目を大きく見開いた。
あの、
あのアレクが泣いている。
アレクシスの目からは涙がぼたぼたとカイよりも流れていた。
「嫌だ……兄さんも先にいなくなった。オマエまでいなくなったらオレはどうすればいい！！？」
「死にたかねえよ、カイ…カイ！！」
「ああ、行こう、病院に！」
カイがアレクシスを抱え立ち上がった瞬間だった。
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作者名：塩味 | 作成日時：2019年1月27日 19時
