相棒 ページ36
出てきた朝ご飯はオムレツとクロワッサンであり大満足だ。
しかしここでスープの一つでもあれば完璧だったのだが、と思いはしたがそれは出してもらっているのに贅沢すぎる。
オムレツを一口中に入れると仄かな優しい甘味とふんわりとした柔らかさで幸せになる。
ふと台所の冷蔵庫の中身が見えたがワインとチーズが詰め込まれている。
そういえば、この前食べたチーズオムレツが美味しかった。
思い出しながら冷蔵庫のチーズを見つめているとアレクシスは何も言わずに少し温め蕩けたチーズを後乗せしてくれた。
思わず頬が緩む。
彼にはこういう優しさと気配りが出来るのだ。
ガサツに見えて繊細である。
自分とは正反対でカイは繊細に見えてガサツだ。
パワーだって断然カイが上回る。
「美味しい」
独り言が出てしまうほどだ。
「あら、本当。アレクは料理が上手なのね。私の分も出してくれるのかしら」
先ほどの女性は化粧もバッチリで、綺麗なドレスを着こなしている。
アレクシスは「へいへい」と雑な返事をしながら片手で卵を割った。
向かいに座るもんだからカイは緊張して思わず正座をしそうになる。
(誰だこの人は)
「あなた、お名前は？」
「カイだ。あなたはどこからきたデスか？」
「私の名前はミレイ。昨日、アレクに助けてもらったのよね。どこから来たって質問なんだけど、それは答えられないわ」
助けた後ちゃっかり、とカイは内心友人を軽蔑した。
「アレクのことが好きカ？」
「えっ？ふふっ、面白いのね、貴方。いいえ…いや気にいってるけど…貴方は純粋なのね、坊や」
「！！坊やじゃない、オレはアレクと歳は一つしか変わらない」
ムキになって答えるものだからミレイはくすくすと喉奥で笑みをこぼした。
「ほれ」
後ろから細っそりとした腕がオムレツを運んで来た。女性は目を輝かせると口いっぱいにオムレツを頬張る。
その姿はカイにとって好感が持てた。
もっと高飛車な女かと思ったのだ。
純粋に料理を食べることに楽しんでいる。
「カイちゃん、貴方はこんなにおいしいものをいつも食べれているのね！」
「まあな」
何か自慢気にかえしてしまう。自分が作ってもいないのにだ。
「…ねえ、アレク、カイちゃん。お願いがあるの。聞いてくれるかしら」
ミレイはフォークを置き先ほどとは打って変わって深刻な面持ちで2人を見つめた。
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作者名：塩味 | 作成日時：2019年1月27日 19時
