Plaisir D'Amour ページ30
頭の上にクエスチョンマークを浮かべているのはミハエルもであった。
「…カイ？何で？あのアレクシスって人をどけたいのは分からなくもないけど、お兄さんまで」
「……」
一気に押し込んだ寿司を飲み込み水も喉へと流し込んだ。
そして、ゆでだこのように赤くなった顔をミハエルへと向けた。
つられてミハエルも頬に朱がさした。
「ミカ。今日のお前はとてもキレイ。この中で、1番だ」
口の端にご飯粒をつけながらガチガチに固い口調のカイの様子にミハエルは思わず頬を綻ばせた。
先ほどの2人には到底見せないであろう表情で。
ミハエルはゆっくりとカイに近付き頬へとそっと手を伸ばし優しく撫で回した。
カイは瞬きをしながら頬をさらに赤くさせ、耳まで真っ赤にさせた。
それを遠くで見ていたロイとアレクシス。
ヒューと口笛を吹くアレクシスの頭をロイは手加減なしで思い切り叩く。
目に涙をためて頭を抑えながらしゃがみこむアレクシスの肩に腰をかけふとロイは笑みを浮かべる。
「少し過保護だったかもしれない。…カイ、俺はお前を救い暮らすために父さんを裏切ったが。…お前はとっくに共にいたい人を見つけていたんだね」
遠くで腰を寄せ合いぎこちなく踊る2人を柔和な笑顔でロイは見つめる。
「アレクシス、音楽隊に頼んでくれないかな。あの2人にぴったりな曲を流して欲しいんだ」
渋々立ち上がりアレクシスが音楽隊へと交渉をしに行く。後半軽く脅しているような口調ではあったが演奏をしてくれるそうだ。
しばらくして流れた曲、それは。
「Plaisir D'Amour」
「へえ。俺はクラシックには疎いから。意味は？」
「愛の歓び」
「君のセンス？結構ロマンチックだったんだね」
「うるせえやい。俺の趣味じゃあねえけどよオ、………。今日くらい」
「今日くらい、何？」
「暗殺者って事、忘れて楽しんじまっても神様は許してくれるんじゃあねえのかな」
そう言い踊る2人を眺めるアレクシスの表情は一瞬、一瞬ではあったがひどく優しいものだった。
(幸せ者だね、カイ。お前は十分、幸せだったよ。うるさい保護者がここに2人いるけど、お前は愛されている。ちゃんと。)
踊りやクラシックに疎い2人でも曲が変わった事は分かる。
2人は向き合い笑い合いながら下手なステップで踊り続けた。
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作者名：塩味 | 作成日時：2019年1月27日 19時
