Plaisir D'Amour ページ29
「…!!」
「アレクは兎も角。よく似合っている。そこは共感だ」
ロイに褒められミハエルは少し複雑な表情となった。嬉しいわけでも嫌なわけでもない言葉に出来ないものがある。
そして何より、カイと顔が似ているためかどこかこそばゆくなった。
「でも、アレク。敵の癖に俺の近くにいて良いの?俺なら今すぐにでも君を仕留められるけど」
「お前この会場を魔法でめちゃくちゃにするつもりか?!損害賠償ってのが恐ろしいぜ〜。ドケチなおめーには出来ねえよ」
カイは全くもって会話が耳に入ってこない。だが一つ言えるのは2人ともに先を越されたということだ。おれだってミハエルを褒めたい、そう悶々と考えながら褒めるタイミングをうかがっている。
「で、ダンスが無理ならよーォ、一緒に…」
「…まだ全部は聞いてないけどそれも嫌。だけど…」
ミハエルは俯いていた顔を上げ、アレクシスを見ながら怪しげに口角を上げた。
「君の相手をするのは殺り合う時なら歓迎だな」
プロのアサシンなら身を以て感じるミハエルの殺気に3人とも本能的に身構えた。
「好戦的なのは悪くねえ。だが場所を考えるべきなんじゃあねーのかい」
「…今日はやたらと場所を気にかけているね、アレク」
「踊りパーティーが出来る場所は潰すもんじゃあねえ、それはここに限ったことじゃないんだぜーっ!?」
「わかった、お前が楽しい事好きなのはわかっている」
ロイはため息をつく。それをよそにアレクシスはある人物を思い出す。天才の檻と呼ばれる狭き世界で生きる物憂げな少女を。いつかあそこから連れ出し楽しい事をさせてやろう、なんて事を考えていた。
自らを短命と覚悟しながら、生きているうちにいずれは…。
一方カイは緊張というベクトルが全く違う方向へと向き、今度は寿司をバカ食いしていた。
それに気付いたミハエルとアレクシスはぎょっとした表情でみる。
「おいおい…勢いが良すぎねえか」
「カイ、食べすぎだよ。どうしたの」
「待ってくれ。兄さん、アレクは、どっか行って」
「…は?」
アレクシスはぽかんと口を開けていたがロイはふと口元に笑みを浮かべ理解が追いついてないアレクシスの襟を鷲掴みした。
「そうだね。俺たちは邪魔みたいだ。行くよ、アレクシス。あっちでチーズでも食べよう」
「に、兄さん」
「健闘を祈る」
頭の上にクエスチョンマークを浮かべるアレクシスを引きずりロイは立ち去った。
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作者名:塩味 | 作成日時:2019年1月27日 19時