入学式 ページ26
咲き乱れる桜をぼんやりと仰ぎ見ながら、やよいはぼんやりと親しい人の顔を思い浮かべる。
「そいやー、今日あいつ入学してくるな〜」
これでもかと空は憎々しいほどに晴れ渡っている。
新学期は好きじゃないのだが あいつ が入学してくるということで少し楽しみのような、いつも退屈な入学式も面白みが増える、そんな気がするのだ。
「やよい、おはよう！」
可愛らしい明るく元気な声が後ろから聞こえた。
やよいはゆっくりと体ごと振り返れば女子がこちらへと向かって走ってくる。
「おはー、純」
ゆるゆる、と手を振りながら待った。
「はあ、しんどい。やよい、今日はこっちの道通ってるの？遠回りじゃない？」
柔らかな長い銀髪を２つにくくり、美しい金色のくりくりとした瞳がやよいを不思議そうに見つめる。
「まあ。気分」
「…？気分？…あ！」
純が突然声を上げ何かに指を指す。
やよいは純と同じ方向へと視線を向けた。
「お〜。し…「白ちゃん！こっちこっち！」
白と呼ばれた少年は純を見るや否や顔をしかめる。
「え…。純って白と知り合いな感じ？」
「おはよう、やよいちゃん」
淡々と白は純をスルーしやよいだけに挨拶をした。
「おい〜、白。わたし以外の人にも愛想良くしなきゃダメだぞ」
「…し、白ちゃん」
「純って白のことどこまで知ってんの？」
「えっ？そりゃ、私たちは…」
「僕たちは姉妹だよ。そもそもやよいちゃん、苗字が同じだとわからなかった？」
「おめーの苗字なんざ覚えてませ〜ん」
「やよいちゃんらしいな」
姉妹は苦笑いをこぼす。
「白ちゃん、今日入学し…」
「話す気は無い。君はやよいちゃんの何だ」
「険悪ムードやめ」
「私は、やよいの友達だけど…」
「友達…？君がか。君じゃやよいちゃんは守れんよ。隣を歩くのも甚だ…」
言葉の途中、やよいは白の頭を無遠慮に叩いた。
白は何が起きたのだと驚いた様子で目を丸くしている。
親でさえ、周りの人間は白に対してぞんざいな扱いは絶対にしない。
皆、白を一国の王子のように扱っているのだ。
だが白は分け隔てないやよいに惹かれているのも事実。この程度で怒りはしない。
「や、やよい」
「姉ちゃんに対して何だね、その態度」
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作者名：塩味 | 作成日時：2019年1月27日 19時
