光輪 ページ20
アレクシスの胸に弾が貫通したのを目の当たりにした。
大きな体が後ろへと蹌踉めく。
カイが手を伸ばすも間に合わない。
蹌踉めき倒れるかと思われた体は踏ん張りまた前のめりの体勢へと戻った。
「こんなんじゃよォ〜、俺はくたばらねえぜ、こっちは心臓じゃあないからなア〜〜！！」
カイはその鮮やかさと技術に瞬きすらするのを忘れた。
アレクシスから数発打ち込まれた弾は1つずつ幹部の額を貫いていった。
が、それと同時にアレクシスの体は崩れ落ち床へと突っ伏した。
「アレク！！」
カイは駆け寄りアレクシスの体を起こすも息が細く目も虚ろである。
「無茶はお前だ」
真珠のような雫が目からこぼれ落ち、白い肌へと吸い込まれる。
唇は青く虚ろな目はカイを見つめていた。
「…俺はお前さえ失わずにいられたら、それでいいんだ。支部長の夢など捨ててもいい」
「そんな悲しい…こ、と…言うな、よ……夢は……おとこ、の…ロマ…ン、だろ………？」
今にも消えそうな細い息を吐きながらアレクシスは目を閉じた。気絶をしたらしい。
「…さない」
奥からまた数人支部のアサシンがやって来た。銃を構えて。
「許さない」
目を大きく見開き飛んでくる弾をカイは両手で握り潰した。
「俺を怒らせたな」
指の隙間からカケラとなった弾がこぼれ落ちる。
その様子を見てアサシンたちは焦って何発も撃ち込んできたがそれもカイの鉄球が巻き起こした旋風によって呆気なく地へと落ちた。
悲鳴を上げながらアサシンたちは退行する。
カイはそれを許さない。
恐ろしい脚力で跳躍すればものの一投で敵数人を殲滅させた。
地に足をつけると同時に返り血がカイの服へと付着した。
(また兄さんに頼まないとな)
床に転がる重傷の相棒を横目で見ながら安堵の息を吐く。
(しかし最近のアレクは無茶が多い。元々頭が切れるやつだからもっと得策があったはずだが…あいつの方が強引だ)
「アレク、帰ろう。腹が減った」
「また飯かよォ……その前にお兄さん治してくれるんだろうなァ？」
「なんだ、意識が戻ったのか。案外大丈夫そうだな」
「ふざけんじゃあねえ。全身が痛くて仕方がねえよ。早く…」
「兄さんに連絡だな。1秒で来てくれるはずだ」
カイはアレクシスの腕を自らの肩へと回してやればゆっくりと歩き出した。
外はもうすっかり明るく日の光が眩しかった。
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作者名：塩味 | 作成日時：2019年1月27日 19時
