光輪 ページ18
「お前、もしかして俺に黙って行くつもりだったのか」
「…まアな。時期支部長候補をおめおめと殺しちゃア俺も顰蹙者だからよ〜」
「……そんなの無茶だ、アレク。俺も共に行く」
「言うと思ったぜ〜。まあ止めろって言っても聞くわけねえよなア」
「もちろんだ」
カイは一気にミルクティーを飲み干し軽く礼を述べればゆっくりと顔を出し始めた朝日に目を細めた。
「腹が減っては戦はできぬ。という おこわざ が日本にはあるらしい。飯にしよう、アレク」
「そう言うんならよオ〜、ことわざ じゃあねえのかア？戦じゃあなくてもよ〜ォ、お前はどうせ飯食うをだろうがっ」
「さあ、作れ。アレク。フレンチトーストを」
「人の話聞けよっ。後勝手にメニューを決めてるんじゃあねえ！」
とは言いつつ渋々台所から何かを取り出して来た。
チーズサンドである。
「俺はフレンチトーストが食べたったんだが」
「そんな文句言ってっとこれも引っ込めるぞ」
引っ込められる、その単語を聞けば急いで手を伸ばす。
間に挟まれたキュウリが口の中に入るや否や教養のないカイは床へと吐き出した。
好き嫌いしないで食えっと横で小言を言う相棒を横目にチーズの美味しい部分だけを食べ進めた。
「腹は満たされた。お前は食べないのか」
「俺はいーや。あとで」
カイは勢い良く立ち上がり溢れんばかりのやる気を全面に醸し出した。
対するアレクはのんびりとした足取りで小さい籠から何やら円形のものを取り出した。
「それは？」
「んー？ワックスだよ」
あろうことか出陣前というのに髪の毛をセットし始めた。
「…アレク。何を呑気に…。どうせ風で乱れる」
「このままで外に出歩くわけにはいかねえ」
誰も見ていない、そんなことを考えているが口にはしない。口にしたところで彼は聞きやしないのだ。
漸く髪を整えたアレクシスは拳銃を腰へと隠した。
カイは隣の自室から鉄球を引きずり、2人は慣れた足取りで玄関へと向かう。
背中へと注がれる朝日を浴びながら男2人は並んで歩く。
何も話すことはなかったが互いの心にはそれぞれ覚悟があった。
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作者名：塩味 | 作成日時：2019年1月27日 19時
