怒りの鉄球 ページ15
先程体中に弾を撃ち込まれ息の根が止まったと思われたカイが勢い良く立ち上がりそのまま鉄球を振り下ろした。
「なにーーっ？！」
バルサが振り返るも遅かった。
腰に重々しい一発を浴び体が数メートル先に吹っ飛んで行った。
「お前に選択をさせてやる」
ゆっくりと歩きながらカイが近づいてくる。
「一、鉄球をもう一発浴びて死ぬか。二、鉄球をもう一発浴びて死ぬか」
「一緒…じゃあねえか……クソ、痛え…」
「3、2、」
カイが構える。
「…」
「い…ち……」
鉄球を握ったままカイはその場へと倒れ込んだ。
「フウ。ラッキーだったなア、俺。だがよオ、こいつア化け物だぜ」
バルサの腰からは血がだくだくと流れているが、カイも正常な動きをできなかったせいか外れていたらしい。
「本気でにいちゃんのとこまでよーオ、連れて行ってやろうかなア」
拳銃を構えたバルサはそのまま弾を撃った。
撃たれた場所はというと鉄球を繋ぐ鎖であった。
「こんな重てえものよく振り回せるよなア〜〜いやあ痛え。腹も減った。帰ったら寿司でも食おうかなア〜〜」
カイをおぶりながらバルサは呑気に夕飯の予定を立て始める。
すると道中、こちらを走ってくる男に気付き立ち止まった。
ロイであった。
「カイ…！！」
「いやア〜〜魔法ってのはほんっとうに便利だよなア〜〜。もう回復したのかよ」
「…カイ！」
「カイカイうるせえなーア〜？お前はよオ」
ロイにカイを渡すとバルサはあくびをしながら退散しようと一歩踏み出した。
「支部長の敵は、必ずうたせてもらうよ。いつか。でも今はカイが…」
「俺じゃあねえけど」
「え？」
「俺じゃあねえって言ってんだよオ」
「根拠と証拠は」
「支部長の体には何発弾が撃たれていた？」
「6…ぐらいかな」
「それが証拠だぜ」
「というと…」
「俺なら1発でやれる。6も無駄に撃ち込んだりしねえからなア」
「！」
「しっかし、今回も兄弟にいじめられて悲しいからよオ〜、お前詫びになんか馳走しろよオ」
「き、君も否定すればよかったんじゃないの？」
ロイは困った様に眉を下げながらバルサへと回復呪文を唱えようと手を伸ばす。
沈黙が流れた。バルサはただただ口角を上げている。おそらく、返事に困っている顔だ。
「おすし…ぃ……」
沈黙を破ったのはカイの寝言だった。
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作者名：塩味 | 作成日時：2019年1月27日 19時
